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「生保」というと最近は「生活保護」の略称だったりしますが、こちらは「生命保険」です。保険会社(メーカー)、代理店(販社)だと言いづらいこと、言えないことを、分かりやすく書いていきたいと思います。新規加入や見直しの際にご参考にして頂ければ幸いです。また、取り上げて欲しいテーマがあればリクエストしてみて下さい。可能な限りお答えしていきます。

保険のプロって誰のこと?

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しばしば経済専門誌などで「プロが選んだ生命保険商品ランキング」という記事が掲載されます。
どこぞでの「オリコンチャート」で選ばれたランキングより信憑性がありそうな感じですね。

あくまで「オリコン」は消費者による人気投票であると思いますが、一応専門家を名乗る「プロ」が選んでいるので、最近のものはある程度納得ができる内容です。
(数年前は「1年更新が合理的」とか「ネット生保は一番安い」など平気でコメントしている「プロ」が幅をきかせていましたので噴飯物でした)

それでは「保険のプロ」とはどんな人なんでしょうか?
そこで今回は、生命保険のプロについてお話してみたいと思います。

一般的に「プロ」と言えば、それを生業にしている人を指します。
一般のビジネスマンはもとより、自営の方や専門職の方などすべてそうですね。

生命保険については、生命保険協会による「一般過程試験」という募集人(販売資格がある人)になるための試験を最低限受かっていなければ生命保険を販売することができません。

難易度としては、普通運転免許の筆記試験程度で70点で合格です。
ここをクリアすれば「プロ」としてのスタート地点に立てたということになります。
「一般過程試験」は入口で、その後「専門課程」「変額保険」「応用過程」そして「生保大学課程」と次々と難しくなっていく試験が待ち受けています。

上に行けば行くほど生命保険周辺の事柄が増えていきます。
例えば隣接業界ということで証券などの知識や、相続など税金関連などの問題が出題されます。
そして「生命保険大学課程」までクリアすれば「生命保険認定FP(ファイナンシャル・プランナー)」と認定されるのです。

ここまで来れば"形の上では"立派な「プロ」と言えるかもしれませんね。

しかし、極めて残念なことなのですが、実践でお客様に役立つ事柄はほとんどこれらの試験などの過程で出題されることはありません。

コンプライアンス(法令順守)や基本的な構造などはしつこく出てきますが、現実的な活用や個別商品の事柄などは全くと言っていいほど出てきません。

でありますから「生命保険認定FP」であっても生命保険商品やその活用に精通しているとは限らないのです。

また1996年以前は、生命保険の販売は一社専属が常識で、その後規制緩和により「乗合代理店」が認められても自社取扱以外であれば「他社との比較=他社を誹謗中傷」と決め付ける傾向があり、未だにきちんと複数社をきちんと比較研究できない、または、しようとしない「プロ」が多いのが現状です。

様々な媒体でFPを名乗り、生命保険の商品や活用法など記述している方も「プロ」の方であると思いますが、ただ単に保険会社のプレスリリースを少しだけ分かりやすい解説を入れて垂れ流しているだけの情けないケースも多々あります。

情けないだけで、毒にも薬にもならないケースであればまだいいのですが、明らかなミスリードをする「プロ」も思った以上に多いので要注意です。

一例を挙げると、「通常の生命保険の掛け捨ては高いので、会社の団体保険があればそちらに切り替えて、会社の保険がなければネット生保にしましょう」と堂々と仰っている方が実在します。

もちろん会社の団体保険やネット生保も活用次第ですが、現状加入のものをやめてそれらにすることを単純に勧めるのは明らかに間違いであり、新たなリスクを生みます。

団体生命保険も更新型がほとんどですので、年齢が上がれば保険料が上がりますので必ずしも構造として合理的とは言えませんし、転職やリストラという事態になれば無効になります。
また、会社の健康診断で著しくない結果が出た場合、更新を拒否されるケースもありえます。

ネット生保についても、20~30歳代の若い時分であればかなり割安ですが、中高年になると必ずしも安くなるとは限りません。
対面販売の「非喫煙」や「優良体」の割引があった方が安くなることが多々あります。

生命保険なんてものは極めて個人的なものですので、終身雇用が崩壊している現状で会社の保険に入ることを勧めること自体で疑問符がつきますし、その他の商品や周辺事情を知らないのか、知っていて言っているのか不明ですが、お客様に新たなリスクを負わせるのはかなり筋が悪いです。

「プロ」と言っても様々で、顔を見て話をしても、資格や経歴を見ても一般の消費者の方が"こいつの勧めるプランが自分にとって役立つものになるのか"は判断できません。

当然、なかにはきちんとした本物の「プロ」も存在しますが、探し出すのは日本海で翡翠(ひすい)を発掘するようなものです。

住宅や自動車などと違って、目に見えず、他のとの比較が難しい生命保険については担当者に比重が極端にに大きくなることが多いので、消費者側のリテラシーが低ければいいようにやられてしまいます。

結局今回の結論も「生保リテラシー」の向上が不可欠ということになってしまいました。


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