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「生保」というと最近は「生活保護」の略称だったりしますが、こちらは「生命保険」です。保険会社(メーカー)、代理店(販社)だと言いづらいこと、言えないことを、分かりやすく書いていきたいと思います。新規加入や見直しの際にご参考にして頂ければ幸いです。また、取り上げて欲しいテーマがあればリクエストしてみて下さい。可能な限りお答えしていきます。

血液検査でヤブヘビ

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そこそこ儲かっている60歳前後の中小企業の社長さんに、ニッセイ法人部の優秀な
営業マンがアプローチをして商談が成立しました。
前回の「簿外に内部留保!?」やその前のファンタスティックな「払い済み」など
をプレゼンして2億円の保障契約を受注しました。(節税および退職金プランです)
個人保険では散々なニッセイですが、法人保険ではカタカナ、外資、損保系に伍する
ものがあり、そこに業界第一位の規模と就職ランキングを誇る知名度と存在感、さら
に法人営業部の優秀な頭脳で決算書を踏まえたプレゼンテーションを行えば、この
社長さんが契約するのは当然といえます。

第1回目の保険料の支払い準備も整い、会社の過去3期分の決算書も提出して、あとは
社長さんが診査を受けるだけです。
保障額が5千万までなら血圧と尿検査だけですが、1億円を超えると心電図と血液検査
が必要
になります。
ストレスと酒と煙草と長年の無理が蓄積されたニッポンの経済を支える中小企業の
社長さんが、血液検査を受けるのです。
歯医者以外は行ったことはほとんどなく、忙しくて風邪を引く暇もないと嘯くような
社長さんですから、毎年の健康診断もさぼりがちです。

このようなニッポンの中小企業の社長さんが、血圧とおしっこで問題なくても、血液
検査で「シロ」というのはほとんど無理でしょう。
そうなった場合は、保険料の割増や保障の減額、最悪は「謝絶」といって今後2年間
は保険契約は見合わせとなります。
この事実は、借金と同じように業界内で情報を見ることができますので、他社でも
2年間同じように保険契約見合わせ
となります。

こうなってしまいますと、法人営業部としても残念な結果ですが、この社長さんと
しても保険に加入できなかったことで節税や退職金の目論みが崩れてしまったわけ
です。
そして2年間は保険加入はできず、その間に通院や入院をすれば、その2年を経過し
ても保険加入はほぼ不可能です。

ここまでお読みになって「残念だけど仕方ない」と皆様は思われたでしょう。

そうです、ニッセイの法人営業やソニーのライフプランナーまたは東京海上日動の
特級代理店でもアフラックショップでも同じ結果になります。

一社専属のところだと、どんなに優秀な担当者でもダメなものはダメです。

そこで乗り合い代理店の登場です。

2億円の保障であれば、4つに分けて5千万円づつ別々の保険会社の同じタイプの商品に割り当てればいいわけです。
保障額5千万円であれば血圧とおしっこでいいわけですから、血液検査をしなくて済
みます。
検査をしなければシロもクロもありません。
社長さんに何らかの自覚症状があり、それを担当者に告げているがネグってしまった
りすれば問題になりますが、まったく自覚症状がなければ永遠の謎となります。

要は保険会社が示した条件をクリアすればいいわけで、それ以上無駄な掘り下げは
不要ということです。
保険会社が「保障額5千万円で60歳なら血圧とおしっこだけでいい」と言っているの
であれば、その範囲できちんと診査をすればいいだけの話なのです。

「4つの保険会社に申し込むとすれば、4回診査を受けなきゃならないの」と思われ
がちですが、多くの保険会社が「診査報状の流用」が可能なので、1回診査を受ければ
その結果の書類(報状)を他社の審査部門に回すことができます。

当然4枚の申込書を書き、それぞれの保険会社に提出する書類が4つ必要ですが、保険
会社を4つに分けることでリスクを分散(保険会社破たんのリスク)できることと、
解約やファンタスティックな払い済みの時期を4社ずらしたりコントロールできること
など(1社だと部分的な「払い済み」は不可であるが、4つに分かれていればそのうち
一つだけ払い済みで一つは解約して換金、その他継続、などいろいろできる)はじめ
の事務処理が面倒なことのデメリットを補ってあまりあるメリットがあります。

「保険会社を分散する」なんてことは20年前にはほとんどありえない概念でしたが、
乗り合い代理店の間では、今は普通のことで太い飯のタネです。
しかし一般的にはほとんど知られておらず、保険契約の一部を他社に回すことなど
一社専属の営業マンが提案することはまずありません。
(目はしの効いた一部の営業マンがキックバックをもらってすることありますが)
診査が通らなかったあとに「それなら分散しましょう」というわけにはいきません
ので、はじめから分散のプランニングが必要です。

一社専属の弊害は、他社との比較が困難というだけではないのです。
保険加入ひいては節税や退職金づくりの機会を失うことにもなりかねません。

ニッポンを支える社長さんには是非知っておいて欲しいと思います。

 

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