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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

ジェフ・ベゾスのワシントンポスト買収とデジタルジャーナリズムビジネス

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この周辺をうろついていると、関連の話題がすぐ目に飛び込んできて、気になるものですからメモ。

本日掲出された日経提携のFinancial Timesの記事から。

[FT]アマゾン・ベゾス氏の一石 米新聞界に再生の芽
2014/4/2

 買収が成立してまだ半年ほどしか経たないにもかかわらず、すでに進められているいくつかの計画からは、そのベゾス氏の影響力と、持続可能なデジタルジャーナリズムビジネスを将来に向けて構築するポスト紙の取り組みが垣間見える。

    中略

 ポスト紙のニュース編集室は約600人のスタッフを擁する。バロン氏はこれを40人近く増員するという。公共政策が現実の世界に及ぼす影響の解説に的を絞った新しい企画のためにデータジャーナリズムに携わる記者や編集者を新たに雇ったり、さまざまな編集プロジェクトのプロトタイプを制作するモバイルデザイナーを採用したりすることになる。

ジェフ・ベゾスは「デジタルジャーナリズム」や「データジャーナリズム」に何かがあると考えてワシントンポストを買収したわけですね。外部協力者にも寄稿を仰ぐハフィントンポスト型の記事集めのイメージも持っているようです(ワシントンポストがハフィントンポストの後を追うという歴史的な現象?)。

それから下のコメントがすごいです。「大勢の人が様々な方法で同じことをする、リアルタイムのジャーナリズムの実験だ」という言葉が躍ってます。

 「ある重大な契機、時代のうねりといったものが今起きているのが、はっきり見て取れる。微積分の発明と発見が同時に起きたようなものだ」。ファースト・ルックの編集チームを率いる元ローリング・ストーン誌編集主幹のエリック・ベイツ氏はこう話す。「我々がこれから目にしようとしているのは、大勢の人が様々な方法で同じことをする、リアルタイムのジャーナリズムの実験だ」

オープンデータとの関係を短く整理すると、

  • オープンデータの活用形態の1つとしてデータジャーナリズムがある
  • データジャーナリズムは、報道系メディアが大きく動いて「デジタルジャーナリズムビジネス」が出現しようとしているなかで、報道の1つの手法として存在
  • 「デジタルジャーナリズムビジネス」が上位概念らしい
  • 上のコメントにある「リアルタイムのジャーナリズムの実験」とは、デジタルジャーナリズムビジネスの枠内でFirst Look Mediaがやろうとしていること


となります。

ファースト・ルック・メディアとは、デジタルジャーナリズム関連の話題の中で必ず引き合いに出される、eBay創業者Pierre Omidyarが立ち上げた新しいメディア企業。媒体自体はいま仕込み中で、今年後半にローンチ。

このFirst Look Mediaのサイトで、Pierre Omidyarが何をやろうとしているのか短い動画で紹介しています(彼自身によるプレゼン)。

非常に興味深いことを語っています。一言で言うなら、「取材に手間ひまをかけてパワフルなストーリーを書くジャーナリストの活動を、新しいメディアビジネスによって支援する」というもの。ジャーナリストが取材に必要なものはすべて提供する、なんてことを言ってます。これは、取材というものがいかに時間と費用を必要とするかを身にしみてわかっている人にとっては、涙が出るほどうれしいメッセージなはず。

深読みすると、こういう事情があるのかも知れません。ソーシャルメディアが全盛になるなかで、「手間ひまをかけて書かれたただ1つのオリジナルな記事」の価値はいやが上にも高まる(ソーシャルメディアで引用されるネタになるから)。そうした非常に価値の高いものを継続的に送り出すためのビジネスモデルがあってよいし、それらはビジネスとして成立して当然だ。だからFirst Look Mediaを立ち上げる。そんな感じでしょうか?

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