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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

豪州ゴールドコーストのライトレール落札者が決定

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オーストラリアのゴールドコースト市(人口59万)で競争入札が行われていた総事業費870億円の官民連携ライトレールプロジェクト落札者が去る5月6日に決定しました。落札したコンソーシアムのメンバーは以下の通り。

GoldLinQコンソーシアム
- KDR Gold Coast Pty Ltd(KeolisとDowner EDIの合弁) – オペレーション&メンテナンス
- Bombardier Transportation Australia Pty Ltd – 設計、ライトレール車両とレールシステムの納入
- McConnell Dowell Constructors (Australia) Pty Ltd – インフラ、建設工事
- 他に出資者としてPlenary Group, 丸紅, Keolis and Aveng Group, International Public Partnershipが予定されている。

ゴールドコーストはオーストラリアで人口増加がもっとも激しい都市とのことで、交通渋滞が問題になっていました。ライトレールが建設されることにより、最初の10年で二酸化炭素排出が11万4,000トン抑制され、自動車通行量の10%削減というメリットが得られるほか、直接間接的に6,300名の雇用を生みます。

今回の競争入札の対象となった第一期プロジェクトでは、13kmのライトレールと16の駅を建設、14台の車両を走らせて、1日5万名の乗客を運びます。競争入札は昨年前半に入札が締め切られ、以下の6つのコンソーシアムが名乗りを上げました。三井物産、伊藤忠、三菱商事が加わっています。

- GCSmartmove(コンソーシアム名):Ansaldo STS, SMRT International, Thiess, 三井物産 and Royal Bank of Canada;
- GC Connect(同):MTR Corp, John Holland, 伊藤忠 and Royal Bank of Scotland Group;
- Move GC(同):Veolia Transport, Alstom, Leighton Contractors and Macquarie Capital Group;
- 落札者GoldlinQ(同):Keolis, Downer EDI, Bombardier Transportation, McConnell Dowell Constructors and Plenary Group;
- Kirralink(同):TransdevTSL, Acciona SA, CAF, 三菱商事, Seymour Whyte and Capella Capital;
- SNC-Lavalin Australia(同):SNC Lavalin, BMD, Thales and Verkehrs Consult Dresden-Berlin GmbH.

プロジェクト概要は以下の通り。

・2029年までの15年のコンセッションを落札したコンソーシアムに付与
・落札者は、設計、建設、ファイナンス、オペレーション、メンテナンスを受け持つ。
・落札者の収入は、ゴールドコースト市から四半期に一度支払われるサービス委託料。委託料はサービスレベル、運行頻度、安全水準などに基づいて決められる。

GoldLinQコンソーシアムへ出資を予定しているInternational Public Partnershipが発表したプレスリリースによるファイナンス関連の事項は以下。

・プロジェクトファイナンスは2011年6月をメドにクローズ。その後、International Public Partnershipが26.6%を出資。また、同時にPlenary Group, 丸紅, Keolis and Aveng Groupも出資。
・プロジェクトファイナンスの貸し手はKfW, Banca Intesa, BBVA and Export Development Canada。

Export Development Canadaは日本で言えば国際協力銀行に当たるカナダ政府系の輸出入銀行でしょうか。

この競争入札では、カナダ、フランス、香港、イタリア、日本、スコットランド、シンガポール、スペインのプレイヤー(金融機関含む)がにぎやかに参加し、国際的なPPP業界(というのがありそうです)でもかなり話題になった案件のようです。

受託コンソーシアムはゴールドコースト市から一種の固定収入を得ることができるスキームなので安心ですね。この事例は、公共交通系では民間側で運賃収入のリスクがない、いわゆる「サービス購入型」が成立可能だということを示しています。また、それだからこそ入札者が多数現れるとも言えそうです。

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後記:

人口60万人の都市でこのような世界的なプレイヤーが多数入札するPPP案件(コンセッション方式のPFI案件)を組成できるのだとすれば、日本でも、うまく工夫すれば、多数の同種のプロジェクトが成立しそうですね。1,000億円以上の初期投資を必要とするものであって、地方自治体が必ず建設する必要があるもので、民間が運営した方が効率化が見込めるもので、さらに、地方自治体が受託民間企業に定期的にサービス購入費を支払う正当性があるもの…。そのように発想すると、対象案件はたくさんありそうです。

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