オルタナティブ・ブログ > インフラコモンズ今泉の多方面ブログ >

株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

インフラPPPプロジェクト公開入札における「事前資格審査」(Prequalification)の審査基準

»

昨日のインフラ輸出セミナーで、「インフラPPPプロジェクトの公開入札では、必ずしも価格だけが評価されるわけではない」とお話したところ、価格以外にどのような要素があるのかというご質問を受けました。

世界銀行が作成している政府関係者用の教科書的な資料"Concessions for infrastructure - A guide to their design and award"にそのへんが詳しく説明してありますので、要約してみます。

公開入札において落札企業を決定するプロセスは、多くの場合、プロポーザルを提出できる企業を予め絞り込むPrequalification(事前資格審査)とBidding(入札)とから成ります。いずれも落札企業決定に密接に関係しているので、まずはPrequalificationの審査基準について記します。

Prequalificationを行うのは、落札が決まった後で、落札企業が長期間にわたるインフラのオペレーションを遂行できなくなる事態を防ぐためです。主には企業の実績と財務的な余裕度を見ます。
主な項目としては、
 1) 入札案件と同規模のインフラ事業の実績が1件以上あるか
 2) 財務力はどうか
 3) 同規模のインフラ事業において一定水準以上の売上を上げているか(売上が少ないようだとパフォーマンスが不良と見なされる)
 4) 特別目的会社設立時に一定金額以上の出資を行うか
 5) 同規模のインフラ事業のサービスにおいてサービス品質が一定水準を満たしているか
があります。

オペレーションの実績を審査するのに、例えば、「従業員1人当たりのアウトプットの量」や「サービス単位当たりのオペレーティングコスト」を見ます。
実際にどういう条件が設定されているのか、事例から拾った表が以下です(出典は上記世界銀行資料)。

Prequalificationcriteria2

入札において極端に条件のよい価格を提示できるとしても、それは落札せんがための背伸びした価格設定である場合は双方のためになりません。Prequalificationはそういう企業が出ないようにするためにも重要なプロセスです。

続くBiddingでは、テクニカルなプロポーザルの内容と、価格面のプロポーザルの内容が審査されます。それについては次の投稿で書きます。

なお、参考資料として、実際にPrequalificationで用いられる書類フォーマットが、エジプトのPPP情報公開サイトで得られます。高速道路のPPPプロジェクトです(エジプトでは政変により政府の体制が不安定になっていますが、それ以前は活発にインフラPPPプロジェクトが実施されていました)。このページにある"Rod el Farag Prequal Doc"という書類がそれです。アドバイザーとしてKPMGが付いていますので、国際的な標準手続きに則った書面と見てよいでしょう。実物がどういうものか、というご参考までに。

Comment(0)