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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

アマゾンマーケットプレイス「1円書籍」の謎を解く

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本は質より量。などということはありませんが、業務の構築に必要な様々な分野の書籍は、1トピックにつき3~4冊は目を通さないと全体像が見えてきません。新本を買っているとコストがばかにならないので、できるかぎりアマゾンマーケットプレイスで古書を買うようにしています。

最近目に付くのが売価を「1円」に設定している古書店がちらほらあるということです。これは何なのか?

古書店の立場に立って考えて見ましょう。1円でも商売全体として利益が出る。そういう仕組みが裏にあると考えなければいけません。
1円でも利益が出る。。。どういうことか?

1円で顧客を引き付けて、以降リピーターにするという戦術でしょうか?アマゾンマーケットプレイスは古書店のリピート顧客が生まれない仕組みになっています(古書店名で検索できない→指名買いはできない)。古書店が自分のサイトを持って本格的にウェブ通販を行っていない限り、これは非現実的です。もっともアマゾンの顧客が以降、その古書店のサイトに行っていちいち検索するかというと、たぶんあり得ません。また、古書店側でも、1冊数百円程度の取扱点数の少ない商品のためにいちいちカタログデータを入力するかと言うと、しないと思います。

ある古書店からの売上メールでつかんだ事実によると、アマゾンマーケットプレイスでは、送料を固定制にして、①購入者から徴収して、②販売者に渡す、という仕組みにしています。固定されている送料の水準は至極妥当なものです。これがどうもポイントらしい。

1円で書籍が売れた場合でも、固定制の送料は購入者から古書店の方に回ってくる…。ここで固定送料と実送料の差でマージンを得られるから、それでいいのだ。と考えるのは早計です。それだけではありません。

一般的に宅配便事業者は中口~大口の顧客に対して「毎月A件発送が出れば1件当りの送料をB円まで割り引く」といった条件付きのディスカウントを行っています。これが背景にあるのではないかと推察します。

送料のディスカウントは古書店にとっては全体の利益額を高めるのに非常に重要な要素であり、条件にあるトータル発送件数を下回って、ディスカウントがはずれてしまう事態になると、採算が厳しくなる。そういう事情があるのではないかと推察します。また、宅配便事業者がそのディスカウントで設定した金額は、アマゾンが設定する固定制送料よりは、ある程度のうまみが出るぐらいの微妙な水準で設定されているのではないでしょうか?(間違っていたらご指摘ください)

従って、毎月決められた発送件数が達成できそうにない古書店は駆け込みで売価「1円」に設定する。対象になる本は非常に売りにくい本であるか、その時代々々の超ベストセラーなどでしょう。

このように背景がわかってしまえば、何の不思議もありません。ただ、書籍の販売価格がいかに古書とはいえ「1円」というのはやりすぎで、個人的にはゾッキ本の100円ぽっきりが最低価格の妥当な線だと思っています。

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