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ヴィジュアル、サウンド、テキスト、コードの間を彷徨いながら、感じたこと考えたことを綴ります。

祝8周年♪:Nik Kershawのアルバム「Eight」を聴きながら。

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1カ月遅れになってしまいましたが、オルタナティブブログ8周年、おめでとうございます。

「8」と言われて思い浮かぶのは、当然、Windows 8。そして、Visual Studio のロゴマーク 90°回転。
......と、窓族の私が書くと、ありきたりすぎるので、別の「8」を。

そのものズバリ、「8」というアルバムです。
英国のシンガーソングライター、Nik Kershawの最新アルバム。

ライナーノーツには次のように書かれています。

8 on its side it's the symbol for infinity.
8 is the number of planets in the solar system.
8 is the number of notes in an pentatonic octave scale.
8 is a lucky number in Chinese culture.

Nik Kershawという名前は知らなくても、「The Riddle」の人、といえば、ああ、あの歌と思い当たる年配者は多いのではないでしょか。
イェーツを思わせる、アイルランド風味たっぷりの、社会風刺の歌です。

20数年前、稀の休日にラジオを聴いていたら、1stアルバム「Human Racing」と2ndアルバム「The Riddle」からのカットが流れてきて、「The Riddle」はもちろんのこと、「I Won't Let The Sun Go Down On Me」に強い印象を受けました。重い内容の詩をポップな曲に乗せていることに驚きました。

私は学生時代からアマチュア音楽活動をしていて、自然や内省や未来をテーマにした歌を作っていました。自分が聴くぶんにも、そういったテーマの歌が好きで、情念あふれる歌や恋愛をテーマにした歌は苦手です。だから、Nikの歌を知って、私にとって好ましいものがひとつ増えたと喜びました。

Nikの歌のテーマの大半は、内省と社会風刺で、時に 子供たちへの愛です。
インタビュー記事などを読むと、実存主義と精神医学に関心があるようで、それらを意識して聴くと解釈が異なる歌もままあり、そういう謎かけ的なところもおもしろいです。
ただ、私には表現がきつすぎて受容できない歌も、少なからずありますが。

もともと橋梁設計のエンジニアになりたかったようで、感情より論理のプライオリティの高い詩が大半ですが、それでも歌として成立しているのは、押韻のセンスが抜群にいいからです。詩・曲・歌が分業ではなく、一人で手掛けているからこそ実現できる、言葉の音の扱い方が、さりげなく凄いです。(これは、開発業務にも通じるところがあります。コラボのほうが結果を出せることもあれば、1から10まで一人で手掛けるメリットもある)

Nik自身も、韻にはこだわりがあり、作詞に思いのほか時間がかかるようで、そのため、作業の遅れを、作詞に使っているWordのせいにして 「次回作がいつ仕上がるかって? Ask Bill Gates.」 と、自身のサイトに書いていたのは、窓族の私にはウケました。これはいいジョークです。普段の会話で返答に窮したら、使えそうです。たとえば、こういうシチュエーション、割とあるのでは。

妻「なんで、あんたったら、フィギュアやパソコンにお小遣いこんなに使うのよっ!」
夫「オレにも分からないんだ。Ask Bill Gates.」

Nikは、3枚目のアルバム発表後、ダウン症の次男の看護のため在宅業務にシフトし、10年後にカムバック。以降、細く長く活動を続けています。
私的には、歌もですが、インストゥルメンタルの方が好きだったりします。「The Day After」とか。歌には、少しだけですが音楽ビジネスの要素を感じてしまうからかもしれません。

アルバム「8」からのシングル、「The Sky's The Limit」は、年を経てまるくなったのか、これまでの歌とは表現方法の異なるシンプルな作品で、次世代への希望にあふれています。

背景には、過去の自分への憧憬と諦観も読み取れます。しかし、Nikは、すこしずつ進化しているし、今も現役。私が神と仰ぐ(ギタリスト)Al Di Meolaも、進化し続けて現役です。
社会の荒波の上をサーフィンしていくには、静止していたのではだめで、自分も身体を動かさなければ、波にのまれてしまう。「好き」を仕事にして口を糊している人たちは、変化し続けています。

重ねた経験、既存の知識、過去に成功した方法、既にどこかで公開されているはずの情報、いま誰かが頭の中で考えつつある着想、過去の自分にとらわれず、変化していくなら、誰でも、年齢にかかわらず、「The Sky's The Limit」だと、私は思います。

PV後半の、移り変わる空の映像がすばらしいので、全画面にして、ぜひ。

Nik Kershaw, The Sky's The Limit (YouTube) Nik Kershaw 公式 PV

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