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ソーシャルビジネス関連において、みずからその現場に身を置くことによって、変化を感じ取っていこうと思っています。みなさまのビジネスのヒントになればと思っています。

災害ボランティアから生まれるソーシャルなつながり

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最近、痛切に感じるのは、利益を求めないボランティア活動こそ、人と人をつなげていく重要な契機になるということ。ソーシャルなつながりを広げていくのには、ボランティアな活動に身を投じることが早道であるということです。

実はゴールデンウィークの5月4、5日、日帰りボランティアバス「スマイルエンジン山形」に参加し、石巻でのボランティア活動をしてきました。

参加者は100名近くとなり、スタートアップとなる今回は、山形大学学長の結城章夫さんや、東北芸術工科大学の学長で、モントリオール映画祭で最優秀監督賞も受賞している根岸吉太郎さんなども参加する、賑やかなものとなりました。

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緑のビブスを着たボランティアチーム。現地で作業内容の説明を受けているところ。

このボランティアバスは、山形大学と東北芸術工科大学の教職員有志によって進められている震災復興プロジェクト「スマイルトレード10%」の企画によるもの。このスマイルトレードには、僕もメンバーのひとりとして企画に参加しています。


ボランティアだからつながれる

このプロジェクトに参加するのも、完全にボランティアでした。平尾清教授と知り合い、そこから数日のうちに打ち合わせに参加、そこから深く関与していくことになりました。最初の出会いが4月11日だったので、ボランティアバス参加まで一ヶ月も満たない、あっというまの展開でした。

これがもし、「コンサルティング料」を請求するようなかかわりであればどうでしょうか。お金を支払うとなれば、お付き合いするかどうか、じっくり考えなければなりません。ヒアリングをし、そこから提案資料を作成、プレゼンテーションを行って、持ち帰って検討して、というプロセスが待っています。

これを待っていては、一向にプロジェクトに参加できないでしょう。

ボランティアで参加することで、こうした信頼構築のプロセスが一気に加速します。私利私欲のために参加しているのではないという、これ以上ない証拠となるのです。


ボランティアから生まれるソーシャルなつながり

もちろん、すべての活動をボランティアでやっていたら、生活はできません。生活をするためには、その対価をもらう必要があります。僕の場合、企業へのコンサルティングや本の執筆、商品開発の印税などで生活を成り立たせています。

しかし大切なのは、こうした対価をもらう活動においても、ボランティア精神で取り組むということです。ボランティアというのはもともと、「志願兵」を意味する言葉です。無償ということ以上に、それを「志願する」ということに重きが置かれています。プロジェクトに志願し、主体性を持って参加することが、重要なのです。

僕は、対価をもらって参加するようなプロジェクトにおいても、依頼された範囲を越えるサービスを「ボランティアで」提供するようにしています。そのことが、人と人とを深くつなげていくことを知っているからです。

言い換えれば、ソーシャルなつながりは、ボランティアから生まれる。そう言うこともできるでしょう。


日常のリソースの10%をボランティアに使う

参加している「スマイルトレード10%」のコンセプトはシンプルです。日常のリソースの一部を使うことで、無理なく、継続的に支援を行っていこう、というもので、その目安となる割合を10%と定めています。

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ボランティアというと、「無償での活動が続くわけがない」という批判をする人がいます。たしかにそれが100%無償であれば続きません。しかしそれが、日常の10%であればどうでしょうか。一日のうち、1時間くらいをボランティアに使うことは、さほど難しいことではありません。

しかも、この費やされる10%は、僕たちに大きなベネフィットももたらしてくれます。それが「ソーシャルなつながり」です。お金でつながっている関係は、「金の切れ目が縁の切れ目」となりますが、ボランティアでつながっている関係は、継続します。ちょっとしたリソースをボランティアに配分することで、人とつながり、信頼関係の輪が大きく広がっていくのです。


ボランティア性をどう、企業活動に取り入れるか

企業においてソーシャル・ネットワークを導入することの難しさの一つに、こうしたつながりの「ボランティア性」との折り合いが付きにくい、ということがあるのかもしれません。

ソーシャルにつながっていくためには、直接的、短期的な利益を求めることができません。ソーシャルなつながりと利益との間に、直接的な因果関係は見つけられません。もし因果関係があるとしたら、それは利害関係でつながった関係になってしまいます。

とすると、効率性や利益を強調すればするほど、ソーシャル・ネットワークの導入が難しくなるというジレンマにつながってしまう。ソーシャルにつながりにくくなってしまう。

こうしたジレンマをどう解決していくのか。ソーシャルビジネスを推進していくためには、単にIT技術やシステムの導入にとどまらない、企業文化の更新という問題もはらんでいるのではないかと思っています。

→小山龍介がキュレーターをつとめる「ソーシャルビジネスの歩き方」もぜひご覧ください。

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