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iPhone SE が売れる5つの理由

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4インチで手頃な値段の iPhone SE が売れるのか?はたまた、こけたiPhone 5c のようにあまり売れないのか話題です。マーケターの永江さんは、古い機種を使っている人としか見てもらえず

あの人、未だに5sなんだわ!かわいそう
とか思われるわけ。4年前に流行った服とか着てるみたいなもんです。
IPhoneSEは失敗作で売れないと思う理由 | More Access! More Fun!

と売れない理由を挙げられています。果たしてそうでしょうか?何をもって売れるかという線引の問題もありますが、 失敗した 5c の二の舞いにはならず、 iPhone 6 Plus と同等か上回るくらい売れるそう予想します。それには5つの理由があります。

理由その1: 成功して多く売れるiPhone には、4インチの小さめのバリエーションが必要だから

自動車が、T型フォードの黒一つだけから、様々なサイズと価格へ、そしてセダンや、ワゴン、クーペにSUVなどと分かれ、更にクロスオーバーSUVなど新ジャンルが生まれていくように、広く使われ成長している製品は一般にバリエーションが増える傾向にあります。スマートフォンは全般的に大型化の傾向がありますが、これだけ多くの人が使うのですからサイズのバリエーションも増えています。

iPhone は元々3.5インチから始まっており、Androidが早く大型化したのに対して長らく4インチ止まりでした。元々OSが小さな画面で使われやすくできておりこのサイズを好む人は少なからず居ると予想されます。

画面が小さいと、片手で扱いやすい、電話機としては小さいほうが便利、画面が小さい分消費電力が抑えられて電池を長持ちさせやすい などなど小さいことの良さがいろいろあります。

もちろん、中間のサイズの4.7インチ機種より売れるとは思いませんが、5.5インチの 6 Plus よりは売れる可能性は大いにあるでしょう。2番めに売れるサイズに4インチのSEがなればそれは売れたと言っていいでしょう。

理由その2:廉価版だった iPhone 5c とは違い、SEは引け目を感じずに使えるから

iPhone SEが売れない説を唱える人の多くは、廉価版だった、iPhone 5cが売れなかったのと同じで売れないと考えているようです。使っている様子を人から見られるのがスマホであり、一番安い機種を使っていると人に見られるのは恥ずかしい、だからSEも売れないだろうといいます。
5c のc はカラフルの c で、ファッション性をAppleは打ち出しましたが、金属をプラスチックに変えた廉価版という印象を拭うことができませんでした。ファストファッションが流行る世の中ですが、スマホは1シーズンで使い捨てにするわけではないので廉価版ではないちゃんとしたものが欲しいという消費者の心理を動かせなかったのでしょう。

一方、iPhone SEは素材としては高い機種と違いがありません。長く使える本物で、少し安いのだけどそれはサイズが小さいからであり安物ではない、そう消費者は受け止めているのではないでしょうか?

SEという型番は、公式には意味がないと表明されているのですが、隠された意味としては Standard Edition ではないか?そう私は推測しています。かつて私がプロダクトマーケティングに携わった、Microsift Office やOracle Databaseには、Standard Edition (SE) がありました。「これが標準品ですよ」というメッセージで少し上をおすすめしつつこれもありという作戦です。シンプルで上質を求める人に受け入れられればこのネーミングは成功したと言えるでしょう。

理由その3: SEは画面が一番割れにくく、一番安心して使えるから

iPhone 6/6s の課題は、割れて壊れやすいことです。iPhone 5 も丈夫というほどではなかったのですが、iPhone 6になって割ってしまう人が続出しています。以前勤務先でiPhoneを使っていたのですが、5からの乗り換えの時に割れやすいから手帳型ケースに入れて落とさないようにと注意をうけました。5も落とし方によっては割れるのですが、6になって角から落として角から割れるケースがとても増えて困っているそうです。落ちた時の衝撃の強さを角からと面で落ちた時を並べてみると、

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角から落ちたら1点に衝撃が集中します。また落とした時にどう落ちるかですが、角から落ちる確率はかなりあります。点接触じゃなく線接触で着地するケースもあるでしょうが、少しでもゆがむと点接触になるわけで角の強さが大事です。iPhone 6も角にはRがついて丸くなっており、完全な点接触で落ちるわけではありませんが、強度が弱く薄いせいかガラスにヒビが入りやすいようなのです。

この6系のiPhoneの画面の割れやすさは、街角やソーシャルメディアですぐに実感できます。使う人が多いiPhone だからということもありますが、画面が割れたまま使っている人をよく見かけますし、画面が割れたという知り合いのツイートも珍しくありません。

その点、iPhone SEは5のサイズで厚みがある分強度があり、6よりは割れにくいと考えられます。画面が割れやすい6を避けてSEにするというケースはそれなりにありそうです。

理由その4:安価で安っぽくないiPhone へのニーズは根強いから

iPhone 5c が出た2013年当時、とくらべて2016年の今、安く買える iPhone へのニーズは高まっています。日本ではキャッシュバック規制で「実質ゼロ円」がなくなり、高額なスマホが売れにくいという現象が起きています。長く使えることで定評あるiPhoneで安く買える機種が売れる環境が少なくとも日本では整いました。

そしてメインターゲットと推定される中国やインドなどの新興市場ですが、材質が安っぽくなくゴールドが選べて安いということが効いて、5色展開の5c よりははるかに売れると予想します。中国でも金色は人気ですが、インドはそれを上回る金色が好きな国です。貴金属としての金がよく買われるのは有名ですが、ファッションアイテムとしても金色が好まれます。安っぽくないものが安価に買えて中身も新しいというのは受けるだろうと予想します。

理由その5:SEはサイズが新しくない分、ケースや保護フィルムなどの周辺パーツが最初から充実しているから

iPhoneが日本で売れる理由の一つは、ケースのバリエーションが豊富で個性を出しやすいからと聞きます。使う人が多くて使い方を教わるのに不自由しない人気機種だからこそ、個性を出しやすいというパラドックスは面白いところです。5cだと安物を使っているのを隠しているようで隠し切れない気まずさがありましたが、SEだとそんな遠慮は要らない分安心して使えるでしょう。

どっちみち、メインの6s よりは売れないので周辺機器を新たに開発してというのは増えないでしょうが、以前の機種と同じサイズであるために、金型の再利用とかで周辺パーツの増産はたやすいでしょう。

以上5点、iPhone SEが売れる理由を考えてみました。予約の出足は悪いという報道もありますが、マニアがこぞって買うような製品では無いのでじわじわ売れるのかどうかが、成否を見極めるポイントでしょう。今後に注目しています。

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