ユーザー参加型ウェブ・ソーシャルウェブを考察するブログ
Web2.0関連スタートアップのほとんどは北米とEUからのものです。徐々にインド、中国、ロシア発のものも現れていますが、数は少ないです。その一方で、最近の私の興味を惹くのはイスラエル発のサービスです。別にイスラエル発のサービスが特段に優れているとか、すでにWeb2.0サービスでの傑出した成功事例があるとかいうわけではないんですが、いろんな面で小国のようで大国のような存在感を持つイスラエルは、常に研究対象として示唆的です。
イスラエルはテクノロジーの国です。国際政治上の特異な立場から、軍と諜報機関へ巨額の資本が投下され続けました。その結果、暗号技術、通信・コミュニケーション、移動体通信、セキュリティ関連の分野などで世界的なテクノロジー先進国となっています。イスラエルのトップ企業と言えば、BackWeb TechnologiesやファイヤーウォールのCheck Point Software Technologiesなど、通信とセキュリティが主体です。ジェネリック医薬品やメカトロニクスなども強いようです。NASDAQには69社の企業が上場しており(2008/3/12時点)、アメリカ以外の国からの上場数としては最多であることはあまり知られていないかもしれません(カナダでも51社、ケイマン諸島で45社)。
Web2.0サービスの分野にも目立つプレーヤーがいます。イスラエル(ユダヤ人)らしくて最も興味深いのはMyHeritageです。これは連綿と受け継がれる人類の血のつながりを、オンライン家系図に集めようとするサービスです。ユーザーは家族のページを作成し、家系図や写真をアップロードできます。写真内の顔は自動的に認識され、自分と似た顔を持つユーザー(血縁関係の可能性)を探し出すこともできます。これまでに約2億人分のプロフィールを集めており、この膨大な遺伝ベースのソーシャルグラフ(ネットワーク)から親戚や祖先を検索することが可能です。このサービスは、世界中に離散したユダヤ人のアイデンティティ保持に役立ったでしょう。ヘブライ語はもちろん、日本語やヒンディー語など既に23の言語に対応しています。
Yeddaもイスラエル発のサービスです。Yeddaは不特定多数の個人のユニークな知識を最大の知的資産と考え、Q&Aサービスを提供しています。質問や回答には画像や動画も貼り付けられ、タギング、回答へのレーティング、得意分野の新着質問のメール配信などが可能です。ただし、リッチテキストエディタを使って書かれた回答はかえって読みづらい気がします。知識の共有というテーマは、教育に熱心なイスラエルを想起させます。イスラエルは、研究開発費の対GDP比では世界第一位、教育費の対GDP比では世界第二位という「知への投資」大国です。
さらに最近躍進目覚しいのは、ユーザーが相互に製品サポートを行う場を提供しているFixyaです。ユーザーは、「iPhoneのタッチスクリーンが反応しないんだけど」とか、「DVDプレーヤーのリモコンが効かない」など、エレクトロニクス製品に関する様々な障害情報を投稿します。他のユーザーはこれに対してチャットやメッセージ、YouTube動画の貼り付けなどによって解決方法を提示し、うまく解決すればFix, ya!!(なおったよ!)と感謝されるわけです。価格比較情報も提供していますが、ユーザーの多くが既に購入済みである事を考えると、クロスセルの提案などが効きそうです。また、レビューはメーカー別・商品別に分類されており、熱心でホスピタリティある解決屋はカリスマ化されます。メーカーから見るとカスタマーサポートのクラウドソーシング(不特定多数の人々へのアウトソーシング)でもありますが、競合サービスのGetSatisfactionほどにはメーカーとの協力関係は密接ではないようです。このようなプロから消費者への発言力の移行は、ソーシャルコマースというECのWeb2.0化のトレンドです。Fixyaの2008年1月の訪問ユーザー数は180万人、前年比675%の急成長を見せています。

その他、Microsoftが買った行動ターゲティング広告のYaData、イスラエルにオフィスを持つセコイア・キャピタルが投資したSEMキャンペーン管理のKenshoo、IBMが買ったオンラインストレージサービスのXIV(創業者は元軍人)、PayPalが買ったリスク管理ツールのFraud Sciencesなど、イスラエル発Webサービスのファイナンス・EXITのニュースが最近多くなってきた印象があります。
イスラエルのこうした技術立国ぶりを支える創業支援制度や研究開発施設にも、やはりユニークなシステムがありますが、それはまたの機会に書こうと思います。イスラエルにしろフィンランドにしろ、人口と資源に頼らずとも鋭利な競争力を保つ一部の国々には、日本も学ぶことが多そうですね。Yalla, Yalla.

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