一つの製品の中に、何でもかんでも機能をテンコ盛りにした結果、機能同士が存在感を主張し合い、結果として全体的な使いやすさを失う、という話はよくあります。そんな中でAppleのシンプルで思想に一貫性のある製品が逆に売れるわけです。3cmもの厚さの説明書と一緒に売られる日本の携帯電話は早晩iPhoneのような製品に食われていく気がします。

 Webサービスの世界でも同様に、大艦巨砲主義的な、これでもかというような機能テンコ盛りは嫌わる傾向にあります。しかし、機能が多いこと自体は悪くないとも思います。機能間の優先順位付けがなされていないことが問題です。「一言で言い表せないウェブサービスは死ぬ」というブログ記事が最近ありましたが、極論するとそういうことでしょうか。優先順位をつければ、何が最も重要な特徴なのかおのずとわかります。

 使い勝手の良いWebサービス、身近な例で言えばGoogleの一連のサービスは、ユーザーに何をさせたいのかが明確です。最も重要なメニューは巨大で余白のあるタブ、大きめのフォント、濃い色彩、そしてより左上の位置を与えられています。ライトユーザーでもすぐに使い始められます。ですが同時に、リテラシー(使いこなすスキル)の高いユーザー向けには、「▼」のアイコンからオプションを選択させたり、「設定」メニュー内に高い拡張性を持たせたりしています。これらのマニアックな深堀りユーザー向け機能は、表面からは見えないところにあります。

 リテラシーが高く、何が何でもサービスを使い込みたいユーザーには、それだけマウスを多くクリックして深くもぐってもらうというのは賢明な選択肢です。大は小を兼ねます。多くの機能を用意したければ用意すればよいと思います。そうして、使うユーザーの母体数が多そうなものから、機能に優先順位をつけ、適切なユーザーインターフェースをあてがえば良いのです。分かりやすさが重要です。

 例を挙げてみましょう。旅行好きの私は、アルゼンチンのブエノスアイレスの小洒落たホテルを探すために日本一の旅行クチコミサイトを自称する某Webサービスで検索してみました。ブエノスアイレスに関する情報が掲載されたページのトップはこんな感じです。

Cap4travel

 面白いことに、この画面にブエノスアイレスに関する情報はほとんどないのです。画面の大部分が、押し付けがましいテカテカバナー広告と、無計画なナビゲーションメニューに占拠されています。「ツアー予約」や「旅行記」など、同じ文言のメニューが画面内に4つも5つもあります。ツアー予約をさせたいという意図がうかがえます。

 海外情報も国内情報もあります!航空券もホテルもあります!プロのガイドもユーザーレビューもあります!広告もいっぱいありますからクリックしてください!というような、「何でも屋」方式で画面設計をするとこうなるような気がします。とはいえ、潜在的なポータルサイト志向はどこにでもあると思いますし、機能を削ることは増やすことよりも難しいのは確かです。

 一方私はまた、ユーザーレビューを多く集める別の旅行Webサービスでブエノスアイレスの情報を調べてみました。下の画面がそれです。

Captripadvisor

 画面中央に、「アルゼンチンのブエノスアイレス、概要」と画面内最大のフォントで表記され、すぐに本文が始まっています。左サイドには「ホテル」「フライト」「写真」「動画」とメニューが整理されています。広告は二箇所にまとめられ、黄色の枠で明確に分離されています。最高に使いやすい、とはいえませんが、十分わかりやすい気がします。何より拝金主義的なニオイを感じないところに好感が持てました。

 二つ例を挙げましたが、何でもできます!という意気込みは、器用貧乏と表裏一体だと感じます。パレートの法則ではないですが、ユーザーの滞在時間の大部分は、少数の機能によって産み出されているのが常です。それはGoogleでもYahoo!でもYouTubeでもfacebookでも同じです。ライトユーザーや、急いでいるユーザー、目的のはっきりしたユーザーにはシンプルな機能を提供し、なめまわすようにあちこちクリックするヘビーユーザーには、表からは見えない深遠な世界を裏側に用意するべきだと思います。

 先鋭的なままではコアユーザーの外にユーザーが広がらないし、一方で単純に機能を追加するだけではわかりにくさが増します。成長を志向するWebサービスであれば、ユーザーのリテラシーに応じた重層性を持つことが必要だと感じます。

Masaharu

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大迫 正治

大迫 正治

株式会社Parmy執行役員プロダクトマネジメント&ユーザーエクスペリエンス担当。このブログでは、ユーザーが参加する新しいウェブの世界についての考察を綴ります。

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