ユーザー参加型ウェブ・ソーシャルウェブを考察するブログ
Googleの提供するOpenSocial APIに賛同を表明したコンテナー(ホストとなるSNS)には、MySpace、Orkut、Ning、hi5、friendster、ImeemなどSNSのメジャープレイヤーが並んでいますが、その中にはビジネスよりのコンテナーも少し混じっています。LinkedIn、XING(ドイツ発のビジネスパーソン向けSNS)、Salesforce、Oracleなどがそうです。
OpenSocialについて少し概要を確認すると、現段階(v0.7)でのOpenSocial APIは、ユーザーが持つ
- プロフィール(自分自身)
- ソーシャル・グラフ(友人ネットワーク)
- アクティビティ・ログ(サイト内での行動履歴)
に関する情報にアクセスすることを可能にします(今後もっと増えます)。ユーザーが持つ情報はSNSによって異なります(例えばあるSNSではプロフィールに「好きな映画」を登録できますが、別のSNSではそのような項目は用意されていません)が、OpenSocialに準拠したリクエストには適切なデータが返されることになります。OpenSocialがカバーしない特殊な情報については、SNS側でAPIを用意しなければなりません。詳しくはNing創業者のMarc Andreessenのブログ記事(1・2・3・4)やTechCrunchの記事へ。個人的にはMarc Andreessenの精力的な記事は非常にアツいです。
話を戻すと、LinkedInとXINGはビジネス向けとは言っても、あくまで「ビジネススキルのある個人」を基本的な単位としたSNSであり、OpenSocialを利用したアプリケーションも想像がつきます。例えば、「情報サービス」の業界で、「マーケティング」の業務経験を「3年以上」積んだユーザーに対して、「事業開発マネージャー」の求人情報を推薦するようなアプリケーションなどを作ることは容易でしょう。
ここでOpenSocialが提供する「Static Class opensocial.Organization.Field(組織に関する情報のAPI)」を見ると、次のような項目が用意されています。
- Field(業界・大項目)
- Sub Field(業界・小項目)
- Name(会社名)
- Web Page(会社ウェブサイト)
- Address(所在地)
- Title(職務名・役割)
- Description(業務内容)
- Start Date(開始日)
- End Date(終了日)
- Salary(給与)
どれもLinkedInやXINGのためにあるような項目です(最近はfacebookもこうしたビジネス寄りのプロフィール項目を用意していますが)。これによると、業界や経験年数などの情報はOpenSocial APIを利用すればよいことになります。さらに職務名や職階などについて詳細なAPIを独自に整備すれば、精緻なアプリができそうです。とは言え、これらはあくまで個人ユーザー向けのプロフィール項目であり、アプリでありAPIです。個人ユーザーが性別や年齢などのプロフィール情報の延長線上で職業に関する情報を持っているにすぎず、企業内で実質的に業務に活用できるものではありません。
では、企業内で活用できるアプリの可能性はどんなものでしょうか?つまりは例えば、SalesforceやOracleなどはどのようにOpenSocialを活用するのでしょう?CRMアプリケーションに格納される情報に、SNSと共通した項目などないような気がしますが。少なくとも営業担当者同士を「友人」と定義したり、「誕生日」や「お気に入りのアーティスト」を入力させても無意味だと思います。Oracleはというと、E-Business Suiteに連携させるのでしょうか?いかにも官僚的で図体がでかいこれらの製品とOpenSocialの融合など想像もつきません。どっちみちSalesforceはAppExchangeやForce.comといった自己流プラットフォームを今後も発展させることに力を入れるでしょうし、そのほうが良いと思います。OpenSocialにはノリで賛同した程度にしか見えません。かつてSecond Lifeに一部の日本の大手企業が賛同した(そしてコケた)ようなノリです。
ではどのようなWebサービスが、将来のビジネス向けアプリを囲いこめるのでしょうか?現状では可能性は広く開かれているように見えます。企業内の人間関係(指揮系統やワークフローなど)や、個人のスキルセット(資格、職能、人脈、専門知識など)を分析し、先陣を切って汎用的なデータ構造に整理していったプレイヤーが、たとえ最初は独自のAPIであっても、徐々にスタンダードとなっていくのかもしれません。
既存の企業向けサービスは腐るほど種類があります。例えばCRM(顧客管理)、SCM(生産・販売管理)、財務会計、人事給与、プロジェクト管理、メール管理、グループウェア、ストレージ、カスタマーサポートなどなど。これらの中でも「個人」や「人間関係」が重要な意味を持つサービス、すなわちプロジェクト管理ツールやグループウェアなどにOpenSocialとの親和性がありそうなニオイを感じます。
とは言え、OpenSocialは当面、個人ユーザー向けアプリを作るためのAPIです。企業にこのトレンドが流れ込むのはまだ先ですし、そもそも流れ込まない可能性もあります。データ・ポータビリティ(異なるWebサービス間で相互にデータを移行できるようにすること)は企業のセキュリティと相反する要素を持っていますし、そもそもコンテナー(プラットフォームとなりうる事業者)はどう見ても不在です。昨今話題のEnterprise 2.0も、「閉じられた世界」での集合知の活用が前提です。ですがMicrosoftも主戦場をWebに移し始めていますし、ビジネス分野へのGoogleの取り組みも徐々に進んでいますから、いつ何が実現するかわかりません。少なくともGoogleは、企業内に閉じられた情報さえも、Web上に吐き出させることを目指しているでしょう。

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