ユーザー参加型ウェブ・ソーシャルウェブを考察するブログ
huluが3月12日に正式リリースしました。huluはNBC UniversalとNews Corporationによるジョイントベンチャーで、ユーザーが投稿したビデオを持たず、テレビ番組や映画など、プロが作る映像をストリーミング配信しています。1月にも『YouTubeからJoost、huluへ: テレビを揺るがす動画Webサービスたち』という記事で取り上げました。huluが意味するのは、「媒体としてのテレビの相対化」です。huluは日本からは通常見えませんが、情報を入手したのでコンテンツ、視聴機能、広告配信手法などをレビューしてみようと思います。
1.コンテンツ
huluは多くの映画とテレビを抱えています。コンテンツを提供するのは、FOXとNBCを中心に、Bravo、Universal Media Studio、USA Network、SONY Pictures Television、Mojo、The Onion、CNET、National Geographicなど、約50のテレビネットワーク、ケーブルテレビ、映画配給会社です。
huluトップページ

テレビでは、24、プリズン・ブレイク、チャーリーズ・エンジェル(昔の)、The Simpsons、シカゴ・ホープ、ER、The Office、House、Fashion、NBA、College Football、Miss Universe、NBC Newsなどがあります。ドラマ、コメディ、SFは充実している印象です。
『プリズン・ブレイク』はセッション3を公開中

一方の映画は、エイリアンシリーズ、猿の惑星、スカルズ、スピード、X-MEN、ユージュアル・サスペクツ、ホーム・アローンなどなど。そこまでウキウキしそうなラインナップでもないですね。現在150本くらいあり、多くは全編を配信しています。
各番組(ショーと呼ばれます)は、数十秒から数分の「クリップ」と、まるごと一時間や二時間の「エピソード」を用意しています。それぞれのショーはアルファベット順、ジャンル別、配信ネットワーク別に検索が可能です。人気順にチェックすることもできます。JoostやMiroなどと比べても操作性は良いと感じます。
一覧表示画面はシンプル、低俗な感じがしない

2.視聴機能
huluはこれまでの動画サービスが備えていたようなオーソドックスな機能を揃えています。各コンテンツの視聴中には、プレイヤーの両側に7つのボタンが現れます。
- エンベッド・・・ブログなどに貼り付けるためのコードを発行する
- Eメール・・・友人にメールで知らせる
- シェア・・・facebook、del.icio.us、StumbleUponなどで簡単に共有できる
- 詳細情報・・・供給元など、コンテンツに関する説明を表示する
- フルスクリーン・・・フルスクリーン表示
- ポップアウト・・・別ウインドウに開く
- ロウワーライト・・・プレイヤー部分以外の明るさを落とし、見やすくする
デザインは非常にエレガントな雰囲気を持っています。安定性は、時折ラグが生じますが、辛抱強く待つと正常になるようです。スムーズにストリームされないときは一時停止しなければなりません。フルスクリーンの質はまだそこそこです。標準サイズでもYouTubeなどよりもサイズが大きく、横長のラグジュアリーで余裕のあるプレイヤーなので、ストレスはあまり感じません。
huluは動画を外部サイトにエンベッド(埋め込み)することを積極的に推奨しています。そのための機能には目を惹くものがあります。例えば動画の再生開始箇所、終了箇所を指定し、プレビューしながら調整することができます。
外部サイトで共有するシーンを指定できる

この機能は、huluがベータリリース直前に買収した北京の動画配信サービス事業者・Mojitiのテクノロジーを応用したものです。huluは現在も中国にエンジニアを30名近く抱えています。
huluはまた、Intelのスポンサーシップを受けて、H.264/AVCで圧縮した1280×720ドットのHD(高精細)映像の配信にも乗り出しています。この種のコンテンツはhulu内のHD Galleryで閲覧することができ、最新映画のトレイラー広告などに利用されています。
アンジェリーナ・ジョリーも出演する最新作『Wanted』

HD映像を見るためには、最新のFlash Player 9と2.5Mbps以上の回線、それにそこそこの能力のプロセッサが必要ですが、画質は最高です。
3.広告配信
huluは多様な方法で広告の配信を行っています。プレイヤーの外では従来型のバナー広告を貼っていますが、プレイヤー内では極めて多彩です。これはコンテンツがプレイヤーとセットで外部サイトに埋め込まれることを十分に想定したものでしょう。
例えば、再生中にスポット型のビデオ広告が挿入されます。タイムラインの途中にあらかじめ白いマークが表示されているため、いつ広告が始まるか事前にわかります。広告再生中は他の操作はできませんが、本編再生までの残り時間を表示しています。
動画の右上にはディスプレイ広告

また、ランダムに(おそらく再生開始からの経過時間をもとに)、本編再生中に画面右下にオーバーレイ広告を表示します。これはマウスクリックによって表示を消すことができます。
その他、ポストロール(再生後)に静止画によるディスプレイ広告を表示したり、再生をユーザーの自主性に完全に委ねたビデオ広告を表示したりしています。特に後者は面白いです。広告を強制的に見せられると見たくなくなりますが、「ご自由に見てください」と言われると見てみたくもなります。前述のHD(高精細)コンテンツも、例えば公開前の映画のトレイラー映像は、言ってみればユーザーに自主的に閲覧させる広告です。
YouTubeとの違い
以上のようなものがhuluですが、これをYouTubeの対抗馬とするメディアの報道がほとんどです(根拠はあまり示されていないようですが)。本当にそうでしょうか?確かにYouTubeとの蜜月の末に袂を分かったNBCがhuluのバックにはいます。ですが、先日YouTubeが今後の方針を明らかにしましたが、YouTubeの目指すものはGoogleの目指す世界そのもの、つまりプラットフォーム化です。huluの親玉であるNBCやNews Corporationがコンテンツメーカーである限り、この点は2者間で異なってきます。
Googleのビジネス手法はこの分野においても、広く遍くコンテンツメーカーに収益機会を与え、自らも薄く広く利ざやを稼ぐというものだと考えられますが、huluの収益機会はNBCとNews Corporationという伝統的巨大メディアに対してもたらされるものです。huluはfancastなど他のサイトへコンテンツを供給していますが、他のサイトのコンテンツをhuluで配信しているわけではないことからも、この点は確認できます。
また、プラットフォームを目指すからこそ、YouTubeはコンテンツメーカーがプロだろうがアマだろうが関係ありません。著作権の問題はプロアマの問題とはまた別です。結局、huluをYouTubeの対抗馬と呼んだとしても、対抗する次元が高すぎるため、あまり意味がないように思えます。どこまでいってもメインストリーム(守旧)とオルタナティブ(革新)のパイ争いに終わりはないし、ユーザーのニーズはそれぞれに対して存在します。
一ユーザーとしての意見を言うと、huluはhuluで権利問題を処理して世界中で視聴可能なところまで持っていくべきです。一方でYouTubeはまた、動画を絡めたWebサービスを一層利用しやすく身近なものにしてくれるから歓迎です。唯一、YouTubeプラットフォームを利用した場合の収益分配の方法が早く明確になることを待ちます。

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