Etsylogo 以前の記事でも取り上げた私のお気に入りのサービス、EtsyがシリーズCラウンドで$27M(30億円)を調達しました(関連記事)。Etsyはハンドメイドのアクセサリーやクラフトワークに特化したP2P(個人から個人へ)のマーケットプレイスです。アーティストな起業家Robert Kalinと、Flashの奇才Jared Tarbellを核に、女性らしさあふれるECベースのコミュニティを構築しています。

 事業はすこぶる順調でユーザー数は右肩上がり、ようやく収益プラスマイナスゼロに到達し、まさに脂が乗りに乗ったところです。VCはこれまでUnion Square Venturesのみでしたが、Accel Partnersも参加したようです。

 以前は「金はそんなにいらない。少額資金でも必要なことに投下し、成長につなげることはできる」という主旨の発言をしていたKalinも、ハードウェア投資、多言語対応、マルチ決済への投資に意欲を見せ、グローバル化とスケーラブル化を着実に進めるようです。今後が一層楽しみです。

 30億円という金額は、日本ではあり得ません。ちょうど今日、最近独立された元グロービスの小林雅氏がブログで日本のベンチャーのファイナンス環境を憂いていました(関連記事1)。

日本の場合、ベンチャーキャピタルが黒字の会社が好きだ---。そして、資金調達するにしても1社3000万円ー5000万円をかき集めて、数億円の資金調達くらいしかできず、最初から、20億円あるからがんばってというのがない---

日本の新興市場に未来はないと感じる。厳格化というのか、成長企業の成長を阻害している最大の悪玉じゃないのか! と思う---

上場して、5-10億円とか資金調達してどうするのか? シリコンバレーのスタートアップで数人の会社のシリーズAのファイナンスを同じ金額ではないか---

ベンチャーキャピタルが黒字のビジネスへの投資が好き、というのはそうだと思います。ただその理由として、私はファイナンス環境と同等もしくはそれ以上に、テクノロジー志向の起業家の供給不足を痛感します。ひろゆき氏などを中心に、Web 2.0はバズワードだった、とか、結局儲からないよね、とかいう意見がありますが、それは単に「Web 2.0はブログ、SNS、プラスアルファ、そんなもんだよね」でビジネス主体が思考停止しているに過ぎません。

 日本のウェブ産業をリードしているのは決して技術者ではなく、マスメディア的思考と広告代理店的営業スキルを操るビジネスパーソンです。彼らの生業はまさしく「サービス業」であり、黒字化志向ビジネスです。いったん深ーくもぐって暗中模索の開発を続け、とがりまくったピンポイント技術で圧倒的な企業価値を生もうという発想では決してないのです。

 少し前、海外の大手検索エンジン会社に勤める方と食事をする機会がありましたが、国際的な事業開発を次々と成功に導いてきた彼の発した最も印象的な言葉は、「The most important thing, is, Technology.(テクノロジーこそが最も重要だ)というものです。重要というのはつまり、技術こそが非連続的な成長の源泉だというわけです。これは西海岸や中国やインドでは真理ですが、逆に日本のソフトウェア産業においては真理ではない場合もあると思います。ただ、圧倒的な成長によって、数百億円規模まで企業価値を持っていくためには、技術に根ざした特異性が必要ですし、そもそも日本が高度な知的財産以外の何に頼って、今後存在感を維持できるというのでしょう。

 小林氏は「ちょっと過激ですが」と前置きして「日本の新興市場はそもそもどうなのか?」という疑問を呈していますが、これは長期的に必ず日本が直面する問題です。遅かれ早かれ、英語を共通言語として、国際的なサービスを、国際的なチームで展開するようなインターネットベンチャーがもっと現れてくるでしょう。そしてファイナンス環境は、こうした萌芽を無為に枯らしてはならないと思います。

Masaharu

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コメント
yamaguchiyu 2008/02/04 22:20

おっしゃるとおりと思いますが、また別の視点から。

仕事柄、高い技術力を持っていそうな(正確には判断できないので)起業家に会うことは多いのですが、あまりにも骨の髄まで技術者すぎて、その人のつくるモノがビジネスとして成長するのは厳しそうだなあ惜しいなあと思うことが多々あります。

グランドデザインというか。ユーザー視点というか。ビジネスモデルというか。そういうスキルはまた別物なのかなと。

なので、テクノロジー×成長するベンチャーが生まれるためには技術者とビジネスパーソンの幸せな出会いが必要なのかな、なんて思ったりしています。

Masaharu 2008/02/05 01:44

>yamaguchiyuさん

コメントありがとうございます。

高い技術力は社会に適応して初めて価値がありますね。有能な技術者というのは非技術者とどれだけ深く対話ができるか、というところが一つの基準になると私は思います。

学者や官僚と同じで、象牙の塔を積み上げてしまうのは専門性ですね。その点、学識も政策も技術も、結局は全てビジネスと生産のためにある、というアメリカの徹底した姿勢を羨ましく思うことがあります。


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