YouTubeが華々しく登場し、あれよあれよという間にGoogleへの売却の決めたのも束の間、今度はhuluがテレビ番組のネット配信を本格的に始めています。

 デジタルコンテンツには劣化限界も資源限界もないため、全てのコンテンツは自由に流通する宿命を持っています。実際、音楽コンテンツは徐々にDRMフリー化が進んでいるが、動画コンテンツも同様に、コンテンツメーカーと流通業者が一体化した従来の産業モデルは遅かれ早かれ見直され、ウェブの存在感はもっと大きくなるでしょう。もっとも、P2Pネットワークにおけるファイル交換など、テクノロジーに根ざした「現実」は、「法」の百歩先を進んでいるわけですが。

 動画をテーマとするWebサービスは百花繚乱です。私が最近使っているWebサービスはというと、メインはやはりYouTube、ときどきVeohMetacafeMiro、ところによりhuluニコニコ動画といった具合です(huluは日本からは普通、見ることができません)。これらのサービスはどれもテレビとの関係に着目すると面白いです。以下では、最近市場をにぎわす7つの動画Webサービスを紹介します。

1.YouTubeLogoyoutube

 YouTubeとテレビの関係は、NBCUniversalとの衝突、和解、提携、そして決裂に至る一連の流れを追うとわかりやすいです(「YouTube NBC」などと検索すると歴史が見えてきます)。初期のYouTubeに対してはしきりに著作権侵害ビデオ(「Saturday Night Live」など)の削除を求めていたNBCも、コンテンツ流通経路としてのYouTubeの価値を認め、一時は一緒にビデオコンテンストを開催したり、番組を配信したりしていました。それが2007年10月には提携解消し、NBCはNews Corporationと共同でhuluを設立、YouTubeと決別したというわけです。2006年2月に削除申請をしていたのが、同年6月には提携、そして翌年10月には提携解消というから、意思決定のスピード以上に、Webサービスの戦略的価値を証明した出来事でした。

2.VeohLogoveoh

 Veohは一見YouTubeのパクリだが、結構違うようです。サーバに動画をためて、毎月何億円もアホみたいにインフラコストがかかるYouTube方式とは異なり、P2P方式を利用して、ユーザーにも負担を分配しています。また、VeohTVという専用ソフトをインストールすると、ユーザーはかなり高画質な動画を楽しめます。Veohにはディズニーの元会長であるMichael Eisnerが出資しており、旧来メディアのバックアップも磐石です。既にNBCFOXなどのテレビ番組も配信しており、ユーザー生成ビデオとテレビ番組のハイブリッド型に進化しています。他の重要ポイントとしては、ユーザーがVeohにビデオをアップすると、YouTubeやMySpaceなどの他サイトにも自動的にアップされるという点が挙げられます。これは、コンテンツメーカーと流通業者を分離するという思想がなければできないことです。

3.JoostLogojoost

 Joostは、Skype創業者が始めたP2P型の動画視聴サービスです。専用ソフトをインストールして使います。配信されるのはプロが作った動画だけです。多くのメディアと提携し、合法的にテレビ番組を配信するというところに期待が集まりましたが、昨年後半以降、失速しているように見えます。私も最初はうきうきして使い始めたものの、最近はめっきり使わなくなりました。理由はいろいろあります。後述するMiroの登場、コンテンツの少なさ、いまいちメリットがわからない機能群などが理由です。今後の巻き返しに期待しています。

4.MiroLogomiro

 Miroは、これでもかと言わんばかりにJoostをツブしにかかったサービスです。専用ソフトをダウンロードして使います(オープンソース)。Joostとは異なり、YouTubeやGoogle VideoDailymotionblip.tvなどの動画サイトを徘徊し、ユーザー生成ビデオからテレビ番組まで、ネット上の動画をドッサリかき集めてきます。P2P方式を採用しており、動画は全てDRMフリー、高解像度でBitTorrent対応ときています。Joostがガチガチの独自仕様で閉鎖的な姿勢をとっているのと対照的です。私はMiroの登場以降、Joostをやめました。太い回線のユーザーならかなり快適にビデオを楽しめるでしょう。なんでもかんでも、と言いつつも、質の高いビデオチャンネルをあらかじめ推薦することも忘れません。最も気に入っている点は、ソフトを起動するたびに自動的に最新の動画をダウンロードしてくれることです。Miroのサイトには、Joostとの徹底的な比較表まで用意されています。この執念。

5.huluLogohulu

 このhuluという変な名前のサービスは、NBCUniversalとNews Corporationのジョイントベンチャーで、YouTubeの対抗馬と目されていることもありますが、YouTubeとは目的が違います。huluはユーザー生成ビデオを持っておらず、テレビ番組や映画など、プロが作る映像をネットで配信するための一大窓口になろうとしています。ちなみにhuluはアメリカの外からは普通、利用できません。メジャー級のバックアップがある割に、これはダサいです。さっさと権利事務を処理して公開すべきです(難しいか)。まぁ見ようと思えばIPを変えて見えるんですが。また、huluは完全にWebベースで、JoostやMiroのような専用ソフトのダウンロードを必要としません。ここでは、多くのテレビ番組がタダで配信されています。「Prison Break」や「24」などの人気番組を筆頭に、Fox、NBC、多くのケーブル局などがコンテンツを配信しています。画質は非常に良く、満足できるレベルです。ちなみにコアなプログラムの開発スタッフの多くは中国におり、彼らはhuluリリース直前に買収された中国のとある会社のスタッフです。huluはRuby on Railsで構築されているということで、RoRの実績もまた一つ増えたことになります。

6.abc.comLogoabc

 abc.comはhuluと同種のサイトで、abcの番組を見ることができます。例えば人気番組の「LOST」など、フルエピソードで配信されています(アメリカでのみ視聴可能)。テレビが登場したとき、ハリウッドの映画産業は映画コンテンツを映画館という閉じられた流通網から開放し、より一層勢力を強めましたが、huluやabc.comの動きを見ていると、インターネットの登場に際してもアメリカンメガメディアの動きは早いですね。作品と媒体を切り離し、作品の自由な流通を念頭に置いた取り組みは、ユーザーとしては歓迎です。

7.FancastLogofancast

 FancastはComcastが運営するサイトで、これもhuluやabc.comと同様の動きを表しています。ユーザーはこのサイトでテレビや映画の新作 情報をチェックし、予告編だけでなく場合によっては本編も視聴することが可能です。huluと提携してhuluのコンテンツも提供しているので、「Prison Break」などを見ることができます。Fancast独特の機能としては、ユーザーの趣味に応じてパーソナライズされた動画をオススメしてくれます。また、ご丁寧にもAmazonやiTunesなど、他サイトでどのコンテンツを得られるかを紹介してくれもします。

 以上のように、テレビとの関係で最近注目を浴びている動画関連サイトを7つ紹介してみました。どれも一癖あって刺激的です。huluやabc.comは、日本国内からでもがんばれば見えるかもしれません。翻って日本はというと、まだまだ民放テレビは放送免許の威を借りた仲良しクラブの域を出ません。コストカットされた無価値なバラエティ番組にはさっさと退場して頂きたいところ、海外Webサービスの黒船的襲来を期待していたりもします。

Masaharu
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大迫 正治

大迫 正治

株式会社Parmy取締役として、会話型ミニブログ「Serend」の運営を行っています。このブログでは、ユーザーが参加する新しいウェブの世界についての考察を綴ります。著書に『Webコミュニティでいちばん大切なこと。』(インプレス)

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