ユーザー参加型ウェブ・ソーシャルウェブを考察するブログ
ハンドメイドのクラフトワーク(アクセサリーや衣類、雑貨など)を作るのが好きでも、しっかりしたECサイトや販売チャネル、プロモーション戦術の欠如のために、週末の趣味で終ってしまうような人々は多いでしょう。そんなアーティストやデザイナー予備軍に、簡易な決済手段とハイクオリティな専用サイト、そして温もりのあるコミュニティを提供する気鋭のWebサービスがEtsyです。
「ウォルマート・エコノミー」への代替案
大量生産された商品を、資金力に物言わせた広告とメガサイズの店舗を通じて消費者に浸透させるような現代のウォールマート型市場では、『消費者のニーズ』とは「そこにある」のではなく、「でっちあげられた」ものに過ぎません。ジョン・K・ガルブレイスはその著書『ゆたかな社会』において、50年前からこうした依存効果(dependence effect)を見通していましたが、まさか消費者がウェブという究極の環境のもとに集い、その壇上にEtsyのようなドリームメーカーが登場するとは想像もできなかったでしょう。
Etsyが目指すのはP2Pマーケットプレイス、つまり中間業者を介さない商品取引です。そしてハンドメイド製品に特化するその姿勢は、まさしく21世紀型のアンチ物質主義です。Etsyでは、誰でも売り手としてショップを開設することができ、プロフィールを公開し、消費者(というよりファン)とコンタクトをとり、マルチ決済と国際輸送(任意)を行うことができます。取引後のフィードバックを得たり、コミュニティで交流したりすることも可能です。買い手としての参加はより魅力的で、最上のFlashをうっとりともてあそびつつ、ユーザーによって分類された商品を、ガイドを見たり店主と会話しながら買っていきます。一見したところ既に完成形であり、とても2005年にスタートしたばかりとは思えません。こうしたWeb 2.0の仕組みを取り入れたEコマースは、昨今ソーシャルコマースと呼ばれています(先日出版した書籍『Webコミュニティでいちばん大切なこと。』では、私はこのソーシャルコマースという潮流を取り上げました)。
技術と無縁のCEOは27歳
Etsyを率いるRobert Kalinは高校をドロップアウトした元大工です。ニューヨーク大学を卒業しており、以前はマンハッタンの安食堂のサイトなどを作っていました。シリコンバレー的な空気とは無縁のアートを愛する青年です。彼のインタビュー映像はWallStripが配信しています(下記)。また、The Dealに掲載されたThe handmade CEO: Etsy founder Rob Kalinというインタビュー記事も、技術者ではない創業者というキャラクターを良く捉えており、とても面白いです。
ロングテールを掘り起こす実用的デザイン
Etsyの代名詞は、その圧倒的にハイクオリティなFlashでしょう。色から商品を検索するColors、出品者の所在地から検索するGeolocator、時系列に沿った検索が可能なTime Machineなど、遊び心にあふれた機能は全てバックエンドのデータベースと緊密に連携しており、ユーザーはいろいろな角度からニッチな商品に出会うことになります。
このFlashを制作しているのは創業メンバーのJared Tarbellで、Etsyにおける彼の肩書きはVP of Visualization(“可視化”担当役員)です。彼はFlashを利用したGenerative Graphic(動的生成グラフィック)の専門家で、オースティン・デジタルアート美術館の理事を務めており、こんなサイトやこんなサイトで作品を見ることができます。JaredというFlashの世界的権威の力もあって、Etsyのユーザー生成データベースは奇跡的サービスとなったというわけです。
少しだけの資金調達、トラフィックはウナギ登り、黒字化間近
Etsyはこれまで3回の資金調達を行っています。一回目はflickrの創業者であるCaterina Fakeや、del.icio.usの創業者であるJoshua Schachterらから$615,000(6千万円)。二回目と三回目はUnion Square Venturesなどからそれぞれ$1M(1億円)と$3.25M(3億円強)。flickrの熱狂的なファンだったKalinが直接メールを送ってコンタクトをとったことがきっかけというから、行動あるところに活路あり、という感じです。
登録ユーザー65万人に対して商品を売るアーティストが6万人ということから、非常に活発なサイトであることがわかります。収益モデルは商品掲載料と、ショーケースへの掲載オプション、それに取引仲介手数料で、ebayよりも安い点もポイントです。2007年11月時点で月間の売上は$300,000(3千万円)、コストが$375,000(3,750万円)ということで、黒字化は時間の問題といった様子です。
プロモーション予算を全く取らず、クチコミによる広がりに任せながらも既にAlexaランクは1,997位、さらにCompeteのトラフィックを見ると訪問者数は昨年に比べて280%と大幅増です。昨年末にはNew York Timesも7ページぶち抜きの記事で報道するなど、2008年の期待も大きいようです。一極集中かつ市場原理的な考えに一石を投じ、かつグローバルに健全な取引を進めるあたり、コンセプト的にはフェアトレードなどが絡んでくると面白いでしょう。Etsyは私の最も好きなWebサービスの一つです。

EtsyはOn Off and Beyondや百式.comなどでも取り上げられています。Etsyのほとんどのコアなユーザーは女性ですが、創業メンバーはごつい男4人です。女性ユーザーを獲得できたのはやはりKalinの感性かなと、インタビュー映像を見ながら思った次第(創業当時から今のデザインです)。商品のクチコミってのは女性メインでしょうね。
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