ユーザー参加型ウェブ・ソーシャルウェブを考察するブログ
フリーランスのプログラマーやデザイナー、ライターやイラストレーターに対する業務アウトソーシングを仲介するElanceというWebサービスが興味深いです。
More than Matching
ビジネスマッチングのためのユーザー参加型サービスというと、早くはLinkedin、Ecademy、Doostangなどがあり、最近ではRyzeやXINGなどのサービスが現れています。彼らは単なるSNSを超えた「使えるビジネスSNS」を目指していますが、あくまで学歴・職歴・人脈をベースとした「マッチング」に留まり、実際の「交渉」「発注」「業務遂行」「支払」まではカバーしていません。これらの先人達はクラシファイド広告コーナー(Craigslistのようなもの)を設けて求職者と求人企業のマッチングを図り始めていますが、機能的には新聞の三行広告を脱していません。
Elanceは「ソーシャルネットワーキング」というコンセプトよりも、「最適なアウトソーシングをWebでいかに完結させるか」という点を重視し、機能を増やしています。アウトソーシングのニーズを持つ企業は、計画中のプロジェクト情報や募集職種の情報を投稿し、フリーランサーや企業からの入札を募ります。入札は公開/非公開を選択できます。その後、集まった豊富な情報から企画・期間・コスト・実績などを比較し、最適な相手に発注します。実際の業務の遂行から支払まで全てElance内で行うことが可能です。Elanceにおける一連の業務フローはストレスフリーで、デザインも洗練され、必要な情報が整頓されています。
取引の信頼の保証
Elanceはビジネスにおける最重要課題の一つである「取引の信頼の保証」のため、多くの手段を講じています。支払はクレジットカード、小切手、電信送金が可能ですが、エスクローサービスも提供しています。個人事業主や小企業との取引において役に立つでしょう。
また、過去の関連する取引実績をチェックすることも可能です(どこの業界でも、小規模な企業ほど取引実績の開示を求められるというジレンマに苦しみます。)ロゴデザイナーの作品リストなど、とても便利です。Elance認定ユーザーには信用を保証するアイコンが付与される他、過去に取引を行った相手からの評価も面白く、
・Quality of work (仕事の質)
・Responsiveness (応対)
・Professionalism (プロ意識)
・Subject matter expertise (専門性)
・Adherence to cost (コストの柔軟性)
・Adherence to schedule (期間の柔軟性)
の6軸にわたる評価を参照でき、入札者が真摯に努力するインセンティブとなっています。実際の作業ステージでは、プロジェクト毎に用意されるクローズドなメッセージボードや、ファイル共有機能を使うことで、遠隔地間でも問題なく作業が可能です。
トランスボーダー・アウトソーシング
『フラット化する世界』に描かれたように、アウトソーシングと言えばインドを想起しますが、Elanceではどうでしょう。例えば「プログラミング」という職種のうち「アプリケーション開発」の求職者は3314人(企業を含む)見つかりますが、そのうち34%にあたる1127人がインドからの登録者で、1086人のアメリカを上回っています。その上、これらの登録者のうち、過去の取引相手による5段階の評定において、平均4以上を獲得した者は、インドでは337人(29.9%)、アメリカでは127人(11.7%)です。量的にも質的にもインドのプログラマーの存在感が感じられます。プログラミングよりも単純な労働のアウトソーシングにおいては、この差はもっと顕著になるでしょう。
Elanceの経営陣はキャップジェミニ、ブーズアレン&ハミルトン、アーサーアンダーセン等に勤務していた元コンサルタントや、ネスレの元ブランドマネージャーなどです。エンジニアは一人、インテル出身者がいるのみです。また、シリコンバレーの有力ベンチャーキャピタルであるKleiner, Perkins, Caufield & Byers(KPCB)が投資しています。
diggという巨大Webサービスがありますが、diggの経営陣はこのサービスの立ち上げスタッフをElanceで探したということです(関連記事)。ユーザーが発信したデータも十分に蓄積されてきたように見え、出口戦略が気になるところです。競合としてはGuruがあり、最近はoDeskも伸びていますが、Elanceが最も洗練されているように見えます。oDeskについてはASCIIに掲載された林信行氏の記事「Web2.0時代の新しい雇用スタイル」に詳しいです。
プロジェクト毎に必要なチームを結成し、プロジェクトの終了とともに解散するというワークスタイルは、企業単位での行動が多い日本では根付きにくいと思います。しかしビジネス・ネットワークのない企業や個人には、こうしたサービスがメリットをもたらすでしょう。後にも先にも、「取引の信頼の確保」が重要です。
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