ティム・オライリーが提唱したWeb2.0というキーワードが市民権を得始めた頃、日本でユーザー参加型サービス(いわゆるWeb2.0サービス)を本格的に提供していた事業者としては、株式会社はてながその筆頭でしょう。しかし、彼らが提供する極めて優れた機能と、短期的な利益を望まない社風は、結果としてITリテラシーの高いユーザーにセグメント(対象)を絞ることとなります。その一方で、カジュアルな感覚のライトユーザーの圧倒的支持を得たmixiの上場をもって、「次世代のWebサービス=mixi=SNS」という等式が、日本におけるWeb2.0の第一印象として受け止められました。

 今となっては、mixiは動画・音楽・画像の共有を実現しましたが、それらに関する機能が「最低限のもの」に留まっていることは一目瞭然であり(画像に至ってはタギングすらありません)、おそらく多くの人々が依然として動画をYouTubeで、画像をflickrで閲覧していることでしょう。なぜなら、mixiの目的は「交流そのもの」にあり、それを実現する機能は「友人関係」「メッセージ」「コミュニティ」「掲示板」の4点セットだからです。この記事のタイトルではこの4点セットを指して「コミュニティ」と呼んでいます。

 ですが日本の現状では、人間同士の「交流そのもの」を直接の目的としないYouTubeやflickrだけでなく、例えばLast.fmのような明らかに音楽を軸としたものや、Yelpのようなレビューを軸としたものまでひっくるめて「SNS」と呼んでしまう傾向にあります。SNSという名で十把ひとからげにされることを免れたサービスは、強いて言えばソーシャルブックマークくらいです。

 このため、「ユーザー参加型Webサービス」という時の「参加」とは、必ずしも「ユーザー間のコミュニケーション」を指すわけではないにもかかわらず(YouTubeで友達関係を作って楽しむユーザーがどれだけいるでしょうか)、日本で立ち上げられるWebサービスに、ことごとく不必要な「コミュニティ」機能が盛り込まれる結果となっています。その裏には、暗黙のうちに「Web2.0とはコミュニティを形成するもの、コミュニティの力を借りるものである」という浅薄なカテゴライズと、mixiという一種の「伝説」において実装されたコミュニティ関連機能への、盲目的な追従があります。

 日本で革新的なWeb2.0サービスが依然として生まれない背景には、教育制度上の問題、クリエイティビティへ価値を見出さない文化、そして梅田望夫氏が『シリコンバレー精神』において形容するところの『起業家主導型経済メカニズム』の未発達などがあることはもちろんですが、上述のように、物事の本質を見極めようとせず、なんとなく前例に従って「よし」としてしまう風土も大きな要因です。いわゆる「コミュニティ」は必ずしもユーザー参加型Webサービスの成立に必要ではないのです。

Masaharu

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コメント
daiky 2007/05/08 23:28

『Web2.0の世界で本当に重要なことは、システムやWeb2.0的なプラットフォームではなく、そこに集まる人とそれらの知を
どの方向に集積させるか』だということを 伊地知晋一さんが『CGMマーケティング-消費者集合体を味方にする技術』で書かれていました。かなり太字で(笑 それだけ、日本では既存のシステムや技術ありきで考える風潮が強いことを暗示してるのかな。と今日たまたま読んでて思いました。

Masaharu 2007/05/08 23:59

>daikyさん

コメントありがとうございます。
ご紹介頂いた本は読んだことがないのですが、daikyさんのご意見は全くおっしゃる通りだと頷けます。この一節を引用された意図がわかる気がしました。

機能(daikyさんのいう「システム」や「技術」)ありきでその運用方法に頭をひねるのではなく、目的ありきで最適な機能を創造してゆかなければ、的外れなサービスが出来上がると思います。

「そこに集まる人の知」って本当に千差万別なので、Eコマースならこう、動画ならこう、っていうステレオタイプにはまると結局メガサイトのコピーに帰すのだと思います。


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株式会社Parmy執行役員プロダクトマネジメント&ユーザーエクスペリエンス担当。このブログでは、ユーザーが参加する新しいウェブの世界についての考察を綴ります。

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