人材ビジネス経験は平均15年以上。古今東西、老若男女の転職を見てきた現役のヘッドハンター達が、今起こっている転職現場の「ホントですか?」を分かりやすく解説。転職成功やキャリアアップのヒントも、5人のヘッドハンターが交代で紹介します。

ここまで違う!日米転職事情

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アメリカは転職大国だと言われていますが、日本とは働く人の転職に対する意識も企業の中途採用のあり方も大きく異なっています。私は、アメリカのカルフォルニア州で4年ほど人材ビジネスに関わって来ましたが、日本人は転職に際して大半が「定年まで働けそうな会社」を探すのに対して、アメリカ人は「次も転職すること前提」で会社を探していると感じました。もちろんアメリカの企業は、それを前提とした受け入れをしているのです。

近年、日本人の転職意識も徐々にアメリカ化してきて、転職することへの抵抗感は薄れて来ているようには感じます。リーマンショック以降、私たちからのヘッドハンティグに「話を聞いてみたい」と応じる割合が飛躍的に増えているからです。大手企業でさえリストラを断行した08年以降、自分で自分の身を守らなくてはいけない時代が幕を開け、「自分を必要とし、今より良い条件を提示してくれる会社があるなら...」と私たちの話を聞こうとする人が増えたのは必然なことかもしれません。

とは言え、転職大国アメリカとの差はまだまだ大きいもの。日本では安倍政権が今後、人材の流動化を進める方針を打ち出していますが、その先進国であるアメリカの転職事情とはどのようなものか?をご紹介します。

■平均勤続年数は約4年

まずは、アメリカ人の勤続年数は世界の中でも断トツで短いという事実から。その月日は約4年半。日本人が11.8年なのと比べると約3倍ものスピードで転職していくのです。もはやオリンピックが来るたびに転職する国民なのです。日本人からすると驚きの速さですよね。

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何故そんなに短期間で転職するのか?という背景はいくつかありますが、まずはアメリカでは1社安住が難しいという意識が強くあるから。業績不振によるレイオフ(集団解雇)が突然やって来ることはアメリカでは珍しくありません。数十年先まで同じ会社で雇用されるイメージをそもそも持っていないのです(アメリカの企業には定年制もありません)。その為、業績が良く、成長している会社へ転職出来る機会を常にうかがっています。

次にアメリカ企業のエグゼクティブは契約による就任がほとんどです。1~2年単位の契約で経営やマネジメントを任されています。つまり頻繁に経営者や上司が変わる可能性が高く、その都度、方針や取り巻く人材が変わります。「今日からいきなり別会社になってしまった...」というのも過言ではありません。別の環境に飛び出したくなる心境はご理解いただけるでしょう。また、近年では企業年金制度の崩壊で1社長期在籍のメリットがより薄くなったということもあるようです。

採用する側も候補者のキャリアが見合えば、転職回数が多くても躊躇なく採用するものですから、「転職を重ねてもデメリットにはならない」というのも重要な背景でしょう。

1社で長く働いていると嫌煙される

そんな転職頻度が高いアメリカにおいては、1社に長い間働き続けている人材は「順応性が低いのではないのか?」や「転職先が見つからない仕事ができない人なのでは?」というように、転職市場で好ましい評価は得られにくい傾向があります。もちろん、1社で出世街道をひた走るようなキャリアの持ち主は別ですが。

日本の場合は1社で長く勤めていると、「転職後も当社で長く働いてくれるのでないか?」という期待から重宝されがちで、逆に転職回数が多いと"ジョブホッパー"と言われ、すぐに会社を辞める危険人物のフラグが立つこともあり、全くの反対です。

レジュメに年齢・性別は書けない

採用の過程で必須になる書類選考でも日米の違いがあります。日本では必ず履歴書に記載する年齢や性別の表記はアメリカではNGです。これは年齢や性別で選考してはいけないという法律が徹底しているから。日本も年齢や性別での採用可否はNGとなっていますが、実際は履歴書に個人情報として必ず書かれていますから、人事担当者は真っ先に年齢や性別を見てしまいます。

では、アメリカの人事担当者はまずはレジュメの何を見るのでしょうか?それは、①キャリアに一貫性があり、②転職によりポジションが上がっているか?ということです。アメリカでは新卒時からスペシャリスト採用を行います。日本には新卒時から各セクションを数年単位で異動するジョブローテーションという考えがありますが、アメリカでは自身の望むキャリアの肉付けにならないポジションへの異動は、専門性が希薄になってしまう為に敬遠されます。個人は一貫したキャリアの構築に励み、企業もそうしたスペシャリストを重宝する傾向にあるのです。

転職の際は調査会社に調べられる

また、採用過程の中でアメリカには必ずリファレンスというフローが入ります。応募者は最初のレジュメ提出時にReference letterと言われる身元保証人が記載されたリストを提示します。その記名された人は前職の同僚や上司であったりしますが、「自分の経歴や人柄はこれらの知人に確認してね」というものです。さらに採用過程の終盤には、調査会社を利用して学歴詐称や犯罪歴がないかなどのバックグラウンドチェックが行われます。身元調査をされることに慣れていない日本人には違和感があるでしょうが、転職が多いアメリカ人はこのリファレンスで信用を担保されるのは当たり前のことです。日本でも外資系企業や邦人企業でもエグゼクティブ級の採用では実施する企業もあるようですが、まあ稀ですね。

いかがでしょうか?働く側の意識も受け入れ側の体制も日本とは随分異なります。だからこそアメリカは、人材の流動が進むのだとご理解いただけたと思います。転職慣れしていない日本人からすると職場を転々とすることは、人間関係を築き直さなくてはならないし、転職先に適応するまで少なからずストレスを感じるし、その為に転職に否定的な方もいるでしょう。

ただ、昨今の日本は、グローバル化が進み、技術やサービスの入れ替わりが速く、企業淘汰が頻繁に行われるようになっています。 アメリカのように"会社が沈む前"に転職を自ら行って、自分のキャリアを守り、築く時代が近いうちに来てもおかしくありませtsukii.jpgん。その為には、"前向きに転職を繰り返せるアメリカ"のようなマインドを持った国民や転職環境が整った国になっていく必要はありそうです。(月井 絵美)

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