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Web2.0時代の企業広報・コミュニケーションと情報活用を再考する

日本企業の軸足は共同体集団が自然!

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前回、前々回と合理的な機能集団運営に軸足をおく欧米企業のマネジメントスタイルの基本が、契約概念の個人主義に基づいて個々人に割り振られていて、だからこそその非効率を改善すべく、インフォーマルコミュニケーションやコラボレーションに関心が向くというお話をした。

では、日本企業は共同体集団と機能集団の二つの機能のどちらを軸足にして、二つをどうバランスしていけばいいのだろうか?これが今回の焦点である。

日本型企業の軸足はどっち?

欧米型の機能集団型の目的追求志向の組織運営は、合理性一辺倒では やはり無理があると考え、人間関係を考慮した どちらかというと日本型に近づいてこようとしていると見ることができる。または、そう努力しているようにも見える。

一方、日本企業は、従来から会議が多すぎるとか時間がかかりすぎるだとか、会議をやっても何も決まらないだとか、さんざんにオフィスワーカーは生産性が低いとやり玉にあがっている。現在でも、日本のオフィスワーカーの生産性の低さを指摘する××大学教授の論文やシンクタンクの××主任研究員なる記事を新聞紙上などで読む。

しかし、待てよ!である。では単純にIT活用で、出張、会議開催削減、意志決定時間を短縮できるのか?企業のオフィスワーカーの生産性は上がるのか?私には手段と目的に整合性があるようには見えない。

濃密なコミュニケーションは企業競争力の源泉

日本の組織運営やビジネスは、欧米企業に比較して濃密なコミュニケーションが前提となっていた。この濃密なコミュニケーションは従来どのように実現してきたかに重大なポイントがあるように思われる。 

かつては、共同体集団の特徴ともいえる、「体験(経験)の共有」が最大の情報共有であり、価値観の共有であり、モチベーションであり、技能継承であった。まさしく、これ以上に濃密なコミュニケーションはないだろう。

私たちは否応なく家族関係、地域社会、同窓コミュニティなどの日本社会という土俵の中でビジネスを行っている。それは、企業内にとどまらず企業と企業の付き合い方や顧客との付き合い方も含め、私たちは共同体運営の域から脱した、もしくはすぐにも脱することができるとは言い難いのではないだろうか。企業間取引でも契約書を欧米流儀で徹底できるかと問われたら難しいと答えるしかない。しかし、国内だけでこの社会やビジネスが成り立っていけなくなったことも、今の日本で共同体的組織運営が旧来通りできるわけはがないことも道理である。

共同体軸足の機能集団運営と二刀流の自覚

あくまで会社という単位の共同体運営を軸足に、合理的な機能集団運営のいいところを取り入れ両立させていくことが、今の日本企業に求められているのではないだろうか。自分たちをはぐくんだ社会をよく見つめると、共同体に軸足を置かざるを得ない、そうしなければ根なし草となってあっちフラフラ、こっちフラフラの千鳥あし組織となってしまう。特に大組織の人事部門は明確にこれを理解して、マネジメントや管理職に徹底していくことが必要だろう。

実際の運営においては、事業目標遂行は「機能集団運営」でいき、情報処理能力の高いかつ帰属意識も高い濃密なコミュニケーションで満たされた集団作りのために「共同体集団運営」を、同時に二刀流のように巧みに操っていかなければいけない。

濃密なコミュニケーションとは判断材料の提供

情報処理能力が高いというのは情報や決定に対する理解力が高いということであって、正確で責任感ある決定や行動が期待できるということだろう。具体的には自分たちの帰属する会社がどのような会社なのかを判断できる過去現在の情報・資料公開、どんなに人数が多くても構成員の個々の顔がわかる社員自己紹介情報、さらには業務と直接関係ないが会社内人間関係の基本要素である各種クラブや同窓会やボランティア活動情報などありとあらゆる周辺情報のことである。俗にインフォーマルとされるものも多いが会社と無関係ではないはずである。会社に籍を置く置かないにかかわらず人は、公式非公式すべての情報で、企業を評価しているものである。日本社会に住む多くの人々はそのように考えているのではなかろうか。ならば、これらをすべて会社公認のもとで情報共有をはじめとすると濃密なコミュニケーションを行えばいいのである。

手段が目的化の排除に留意

一点非常に注意を要する問題がある。それは、個々の組織が「共同体化」しないように細心の注意を払って、組織・機構マネジメントをトップが行っていかなければならないということ。もともと、機能運営を得意としていないために、目的達成が困難と見るや手段(組織運営)が目的化、つまり組織防衛が起こりやすい。この様な現象を精神分析ではフェティシズム(物心崇拝)という。部門の長が共同体運営に引っ張っていこうとするのを部下は止めるすべを持ち得ない。会社全体を見る立場の人間の責任は大きい。

まとめ

さて、本日のまとめは、経営幹部や本社機能による会社全体で濃密なコミュニケ―ションを実現する「共同体集団運営」を軸足に、しかし社内の各業務組織マネジメントは「機能集団運営」でそれぞれが得意の方面で効率を追及していく「二刀流」が日本企業に適した組織マネジメントではないかと考える。

日本企業の経営トップには、会社全体に共同体マネジメントを、同時に個々の事業遂行組織には機能運営マネジメントという、宮本武蔵ならぬ二刀流が要求されている。

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