最近うちの会社の求人に応募いただいて、縁あってお話する機会ができた方にときどきしている話が、何度も話してるうちにだんだん理が通ってきた。挨拶の次の、事実上のファーストエントリとしてはちょっと重いが、せっかく書いたのでアウトプットする。法人向けソフトウェアと、受託開発ソフトウェア/SIの比較の話。
受託開発ソフトウェアは、ある特定のユーザーのために作られる。だから(理論的には)お客様を100%満足させることができる。しかし、人間が動かなければいけないため、届けることができる先は限られている。また、人間が動くため価格も高くなりがちである。
パッケージソフトウェアは、ある特定のユーザーのために作られるソフトウェアでは無い。かわりにある市場のために作られる。
だから、パッケージソフトウェアは、よほど定型的な作業が存在する市場でなければ、ユーザーを100%満足させることは構造上難しい。どうしても最大公約数的な仕様をとるためだ。この満足度を仮に「85%」としよう(数字自体には100%未満であるという以外に意味は無い)。
その代わり、パッケージソフトウェアは、人間の作業ではなくビットなので、より多くの人に満足を届けることができる。また、85%の満足度を作る作業にかかるコストは、多数のユーザーでシェアするので、価格も比較的小さくなりやすい。
ユーザーがユーザーの業務をソフトウェアの方にあわせれば、満足度を100%に近づけることができる。しかし法人の場合、これはユーザーの組織のスタイルによってはコストを伴うので、できる組織とできない組織がある。一般に組織が大規模になればなるほど、業務をソフトウェアにあわせるコストは大きくなる傾向にある。こうしたコストは、パッケージソフトウェアベンダーのセールストークの中では一時コストとして表現される。
パッケージソフトウェアベンダーは、長期的にはソフトウェアの調達コストが下がるため、また業務フローを一から考える手間が省けるため、その一時コストを負担することによって長い目ではかえって省力化/コスト削減がはかれると主張するが、ユーザーにとってはその言葉を信じることは常に一定のリスクを伴う(そもそもそのソフトウェアが市場に合致しているのかということ、またその企業が市場の変化に応じてタイムリーにソフトウェアを改良していくのかどうかということ、その他の不確定事象によって、結果として正しい場合と間違っている場合がある)。
そのようなわけで、パッケージソフトウェアで一般に85%の満足度しか得られないのは、パッケージソフトウェアモデルの明らかな欠点であり、これを補うために、いろいろな工夫がされている。
1. いくつかの典型的な用途を見つけ出し、様々な派生エディションを作成するアプローチ
~Editionとか~版とかいう形で、様々なバージョンを作成し、85%から100%に近づけること。パッケージソフトウェアなので、100%にはならないが、場合によっては100%にかなり近づけることができる。
2. ソフトウェアをカスタマイズ可能にし、適応性を上昇させるアプローチ
柔軟な設定項目、もしくはAPIやSDKの整備などの形を取る。そのソフトウェアだけではできないが、そのソフトウェアを100%に変えられるかもしれない方法を残し、ユーザーにはそれを使うよう促す。これだけ取ってユーザーの視点から見ると「つくりかけ」を提供しているも同然であり、一種の開きなおりである。そのため、3, 4と組み合わせられることが多い。
3. コンサルティング/サポートサービスを手厚くするアプローチ
2を使って、ソフトウェアを業務に合わせて拡張する方法や、逆に2は使わずに業務をソフトウェアに合わせる方法を提供するためのコンサルティング/サポートサービスを提供する。2の使い方を販売パートナーやユーザーに伝授する教育も含まれる。
4. 本体をカスタマイズするアプローチ
ユーザー毎の要望にあわせて、85%だったもの作り替えて100%に近づけるサービスを提供する。一見望ましい解のように見えるが、元が作り変わってしまうため、製品の継続性という観点から言うと、製品の継続アップデートにかかる費用を他のユーザーと共有できなくなってしまい、パッケージソフトウェアを選択することの利益が失われるため、ユーザーは2, 3も合わせて選択し、4の範囲を限定的にとどめるのが望ましい。
いやー、軽い気持ちで書き出したが、長かった。ここまで読んでいただいている方、本当にありがとう。7~8年の歴史分の長さなので、勘弁してほしい。というのは、以上、一般論のように書いたが、実は一般論ではなく全部HDE(以下当社)が自分で体験してきたことだ。当社は1~4までの道のりを順番に歩みつづけている。
で、どんな時にこの話をしているのかというと、ひとつは当社のSI部門の人材募集に応募された方で、「この会社はパッケージソフトウェアの会社だ。パッケージソフトウェアの会社では、SIとかソリューション部門というのは、脇役なんじゃないか」と考えている(かもしれない)方にしている。我々は、いかに少ない人数で世の中をたくさん動かせるかということを考えて業を興したため、当初パッケージソフトウェアの提供というテコを選んだ。しかし、我々の大事な目標のひとつは、お客様の満足度を100%にすることだ。
パッケージソフトウェアでお客様の満足度を100%獲得できると考えるほど、我々は傲慢ではない。パッケージで提供できない残りの15%を獲得するためには、お客様のために2, 3, 4を最適に組み合わせることが必要で、それはとてもとても重大な、パッケージソフトウェアの「ラストワンマイル」だ。15%といっても、85%を作るのと同じだけ重要な意味をもっていて、同じだけ難しい・・・と伝えている。
一方で、パッケージ開発部門の人材募集に応募された方で、パッケージソフトウェアを作るということのやりがいとすばらしさについてピンときていない(可能性がある)方には、以下のような話しかたをしている。
一人のお客様に100%の満足を提供するのも大変やりがいのある、すばらしい仕事だが、一万人のお客様に85%の満足度を与えるためにはどうしたらよいかを考えるのも、とても楽しい仕事だ。100%にはならないという定めのもとで、今85%しかない満足度を、86%、87%とどれだけ100%に近づけられるのかを考えるのも、とても楽しい仕事だ。
パッケージソフトウェアの世界では、仕様に正解は無く、確からしい憶測しか無い。それは開発者がクリエイティビティを試されているということに他ならない。出してみないと75%なのか95%なのかわからない。パッケージソフトウェアのリリースにかかわるのはとてもスリリングで貴重な体験だよ、と。
というわけで、どちらにしてもパッケージソフトウェアに関わるのは本当に楽しい。
なんか昨日は「柔かい部分を出すためにブログを書く」とか言ってた気がするが、基本的な考えを吐き出して、後は柔かいノリで行こうと思います。Please stay tuned!

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