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「脳内ビジネス」の話はまたにします!

正社員という制度は限界に来ている。...らしい。【長文】

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なんか最近、掲題のようなエントリーを読みました。
つまらない導入から入ると、IT業界の正社員エンジニアというのは極めて特殊なわけです。
彼らは、というか、弊社にもいるのですが、というか、弊社は全員正社員エンジニアなのですが、彼らは「手に職をつけた特権階級」なので、転職などはかなり自由にできるのです。
周りの同業者を見ていても、「物凄くできる社員」というのが突然辞めてしまうことは珍しくないですし、逆に中途で即戦力級の社員が入ってくることもあります。かなり流動性が高いと言っていいでしょう。
そんな中で、日本では労働基準法というのがあって、彼らは簡単にクビにはならないようになってます。
意外とみなさん知られてないことだと思いますが、就業規則を作っているような企業には顧問の社労士がついていることが多くて、彼らは自己都合で社員が退職するたびに「ちゃんと退職届をもらいましたか?日付は入ってますか?自己都合の理由も書いてありますか?」と神経質に確認してきます。
どうもネット界隈では「中小企業では労働基準法なんて守ってない」というのがまことしやかにささやかれていますが、そんなことはないです。いや、と思います。私の知る限りでは。
で、社員からは自由に辞められて、再就職もかなり簡単であるというのに、会社都合では辞めさせられることがない、というのは、なんともアンバランス。
おまけに開発会社なんていうのは、腕に覚えのあるエンジニアが、明日にでも独立宣言をすればすぐに始められる生業です。
その意味で正社員エンジニアとフリーランスやスモールカンパニーのエンジニアはほとんど立場的に変わらないのですが、なぜか正社員エンジニアだけ工場制手工業時代の名残のような法律に保護されている、という奇怪な状況です。
会社は顧客のニーズによって柔軟に体制を整えなければいけないのですが、「拡張は許すけど縮小は許さない」みたいな法律があるとそれができません。
みなさんは必要なくなっても自由に解約ができないアプリを購入しますでしょうか?
つまり縮小を禁止すると拡張も禁止したことになるのです。
これは特に経験の少ない若い人には本当に不幸な話で、すごく面白そうな人材(たとえば勉強は全然やってこなかったけど、ゲームだけは死ぬほどやってきたみたいな人)で、もしはまれば大化けする、という人をお試しで採用できません。
試用で採って、半年くらい頑張って実力のほどをみさせてもらう、というのは双方にとってメリットだと思うのですが、本人がいいと言っても法的にはそんな契約は許されません。
半年も雇えばもちろんのこと、実際には試用判断は2週間以内にしないと、いろいろ面倒な手続きが待っているのです。それこそ社労士の先生が戦々恐々とする事態です。
IT業界は工場制手工業じゃないんですから、2週間で『使えるようになるかどうか』なんて誰にも分かりません。必然的に、経験のない人は取りづらくなってしまいます。
それで常々、「この前近代的な法律、なんとかしてよ」とtwitter等で訴えたり城繁幸さんのブログをRTしたりしているのですが、特に何の効果もなく。。
こういうのは、経営者にしかなかなか響かないですね。
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ただ、ここで愚痴ばかり言っても仕方なく、それは環境として受け入れて、別の発想をしていかなければいけませんね。
実際のところ、この正社員エンジニアの特質というのは、百害あって一利なしかというとそんなことはないです。
短期的な売上の上下げや、業務転換によってクビになることがない、という保証があれば、彼らは長期的スパンで会社と付き合ってくれます。
「みんなで頑張って、3年後、トイレ掃除しなくていいオフィスに行こうな!」
という言葉が響く可能性があります。
あ、ちょっと夢が小さすぎますかね。
「友達に社名を言ってもすぐわかってもらえるような会社になろうな!」
というくらいでしょうか。
こういう「家族的経営」っぽいのはどうなのかと思ってしまうところもありますが、それはそれでいいところでもあります。
社長も社員もみんなで一丸となって、この小さな会社を盛り立てて行こう!と。
こういう発想に導いてくれる点では、労働基準法も悪くない法律かもしれませんね。
、、、と前向きに考えてみます。
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話はちょっと変わりますが、
先日、twitterを見ていたら@takezinさんという方が、佐々木俊尚氏の著書『仕事をするのにオフィスはいらない』について以下のように書いていました。
この本は私も一度読んでみたいと思いつつも、まだ読めてなくて残念なのですが、本当にその通りだと思います。『役員』というのがちょっと違いますが、主旨は同意です。
私は今年初めから、知り合いのベンチャー企業の採用面接に立ち会う形でベトナム視察に行ってきました。
そしてその後『オフショアがうまく行かない理由(2/2)』こちらの記事にあるようにラボ型開発の可能性をさぐりつつ、同じモデルを国内の地方でできないかなどあれこれ検討し、いや待てよ、ここで敢えて中国進出してみるのも逆流もあったりして面白いのではと思い上海の開発会社の社長さんとお会いしてお話を伺ったり、いやいやそれであれば『徳島の過疎地にIT企業のオフィスが集結してるらしい』こんな動きもあるようだし、地方自治体の誘致に乗っかって地方にサテライトオフィスを作った方がいいかなー、などいろいろ考えてきました。実はその先にもう一つ考えていることがありますが、今の段階ではまだ酒の席のネタレベルですので言及は控えておきます。
で、広がりすぎて頭がいっぱいになってしまいましたが、このように今は、システム開発の仕事なんていうのは、世界中のどこでも可能です。
クラウドサービスや公衆WiFiなどが発達してきているというのもありますが、それに加えてVPNソフトというのが非常にお手軽な感じで普及してきたというのも大きいですね。外部から公衆回線を使ってセキュアに会社のリソースにアクセスできたりネットワークセグメントを利用できるのは、我々開発屋にとってはとてもありがたいことです。
また、数年前からの動きで、開発者がUNIXベースのMacを使うようになったというのもあります。わざわざ社内やデータセンターにあるLinuxサーバに接続しなくても、開発環境を自分の端末に作って持ち歩き、動作確認やデバッグなどもノート端末で完結させ、定期的にGitを使ってソースをコミットするなんていうのが主流になっているようです。
そういえば、最近、社内のPCを新調しようかと販売店のサイトを見ていたのですが、売れ線のラインナップからデスクトップマシンというのがかなり姿を消し、ほとんどがノートですね。デスクトップマシンを自席に置いていると、どうしても持ち歩き用のノートと自席端末間のデータ同期という厄介な問題に頭を悩ませる必要がありますが、自席のメイン端末をノートにして、それを持ち歩けばDropBoxすら必要なくなります。私も先日自宅にあったデスクトップマシンを廃棄して、会社のノートでやってますが、とても快適です。
ノートは画面が小さくて自席端末としては苦しいという話もありますが、ウィンドウ切り替えの機能はMacにもWindows 8 にもありますし、こんなのを使ってUSBで大画面モニタをいくつもつけることが可能で、いろいろ工夫はできます。
こんな感じで、特に我々開発屋にとっては今どこに居るか、というのは意識しなくてよい方向への環境が次々整ってきています。
これまで私は成果物のクオリティを維持するため、というか、会社ポリシーに合わない成果物をお客さんのところに納めることのないように、すべてを正社員エンジニアによって製造していました。
ただ、今となってはこれはかなり筋の悪い方向性だと思っていて、家族経営が体をなす限界の15~20人規模の会社をコアにしつつ、全国、あるは国外も含めたフリーランスやスモールカンパニーの方々と、柔軟に協力して仕事をしていくべきだと思います。
これは一昔前に言われたような「コアコンピテンス業務に特化するために、比較的不得意な分野はアウトソースする」というようなセコい話ではなく、「これまでであれば同一社内でやるべきだったことを、企業の枠を取っ払って、複数組織で協業する」というものです。それは一種の共生システム、エコシステムと言ってもいいかも知れません。
納品した成果物に責任を持つという意味では、会社ポリシーに合わない成果物を納めないというのは大切なので、絶対に崩してはいけないことだと思いますが、そのためには、同じ開発文化を共有できる仲間を探すか、あるいは話し合いの中で構築していけばいいことでしょう。
今、私はそういう体制を作るための仕組み作りを考えていて、何人かのフリーランスの方、スモールカンパニーの社長さんにお声をかけさせていただいています。あ、いや、これからかけようとしているところです。
もしこのムーブメントにご興味がある方がいらっしゃれば、ぜひコンタクトをお願いします。特に地方や海外のエンジニアさん企業さんというのが、この先広がっていく夢がある気がしますね。
只今なら若干の空きがあるようでございます。どうぞお早目に。
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実はこの仕組み作りに是非一役買っていただきたかったスモールカンパニーの経営者夫妻が小樽にいます。
それはモンスターズガレージという開発会社さんで、社長の中山社長は、私がこれまで接してきた方の中では屈指の高い技術を持ったエンジニアです。センスもありますし、苦労人でもあり、業務理解も早く、物事を変態チックに突き詰めるところがあります。先日もCloud9(https://c9.io/)に似たIDE(統合開発環境)を自製してましたね。ちょっと見せていただきましたがhtml5のWebSocketを駆使した凄いものでした。
そんな資質とスキルがありつつ、人間の言葉が普通に通じる人というのは、この業界ではかなり少ないです。
今回は、いろいろ都合が合わず、前述の仕組み作りにはご参画いただけなかったのですが、彼もまたそのIDEを使ってエンジニア同士(フリーランスや社員エンジニア問わず)のネットワークを作り、技術力の向上に尽力したいと言っていまして、ビジョン的にはかなり似ているところがあります。ちょっと腰を据えて考えて、来年以降にでも何かできると面白いですね、という話になっています。
シゴトビトは2人目にして更新止まってしまったのでは、とあちこちから言われていますが、単純に小樽まで行って雲丹を食べつつ、このあたりのご相談をしていただけです。
ということで、シゴトビト3人目はモンスターズガレージの中山社長と奥さまです。

 

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