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入れ墨は徹底排除されるほどの悪なのか?

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オリンピックも終わり、お盆も終わりということで、そろそろ2012年の夏も終盤に入ってきたが、みなさんいかがお過ごしでしょうか?

さて、この夏がいよいよ佳境に入ろうかという頃に、ちょっと気になる記事があって、今も私の心にひっかかっている。


非常に違和感の残るこの記事。

埼玉県の県営プールで、入れ墨チェックのために警察のOBを採用して徹底し、効果を上げているとのこと。

記事はおおむね好意的な論調だ。

このプールは、これまで入れ墨の規制が遅れたために、首都圏のプールで追いやられた入れ墨のある人たちが集まってきた。だから異様なほど入れ墨の人だらけの状態だったと記事は紹介する。

写真が無いのでそれがどれくらいの状況かは分からないが、確かにそうなってしまえば、普通の入れ墨無しの人が行きにくくなるのは間違いないだろう。

しかし、そもそも、日本全国で今繰り広げられているこの「入れ墨全面禁止」というアクションの思考ロジックはどういうものだろうか?

おそらくこうだ。

[1] 入れ墨をした人の中にヤ○ザ屋さんがいる
  ↓
[2] 彼らを排除したい
  ↓
[3] 現実には、入れ墨にはデザインタトゥー的なものと、いかにもヤ○ザ屋さんっぽいものの二種類ある。
  ↓
[4] その判断がつかない。感覚で判断するとトラブルになる。
  ↓
[5] [2]を達成するためには両方とも排除するしかない!


単純で非常に分かりやすい。

ただ、すべてのアクションは、行うことによるメリットとデメリットの比較衡量で考えなければならない。


「入れ墨全面禁止」で得られるメリット
 →入れ墨をした人の中にいるヤ○ザ屋さんの排除

「入れ墨全面禁止」で引き起されるデメリット
 →ちょっとした入れ墨をした一般人の迫害

どうなのか?

まず得られるメリットがそれほど大きくない。

私はこれまでおそらく数百回プールや公衆浴場を使っているが、入れ墨をした怖い人に怖いことをされた覚えがない。あったかもしれないが、忘れてしまったくらいのレベルだ。

それに引き換え、デメリットは大きい。

まずワンポイントのデザインタトゥーを入れる人が、それを入れる当時、ここまでの規制が徹底されるとは本人には当然予見できていない。また入れ墨を入れることは違法な行為ではない。そして、他人を脅かそうという意思もまったくもっていない人が多いだろう。

そんな人たちが民間公共を問わず、プールや公衆浴場等で入場を拒まれるのは非常に納得のいかないところがあるだろう。

男性専用、外国人お断り、と同じでこれは明らかな人権侵害だ。

少ないメリットに比べ、この大きなデメリットを持つアクションには、もっと批判的な視点があっていいと思う。

先の埼玉のプールで、やたらと入れ墨をした人が多く集まってしまう解決策は、周りのプールの入れ墨禁止を5年10年前レベルに緩和することかもしれない。

あるいは、昔に戻すのではあまりに保守的だと言うのであれば、在宅の10名のバイトがモニタリングして、6人以上がNGと判断した入れ墨だけ排除するとか。それも今なら十分可能だ。コストもそれほどかからない。

とにかく全排除はあまりに乱暴だろう。

今後も日本には外国人の流入は続くだろうし、いずれ「入れ墨=ヤ○ザ」というようなステレオタイプな視点は通用しなくなっていくだろう。

その感覚の変化が定着するまでの間、ちょっとしたデザインタトゥーを入れた人たちが排斥されるというのが、私には不憫でならない。


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