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NPO法人での位置情報サービスとボランティアについて

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「駅.Locky」等の運用をNPO法人(特定非営利活動法人)で行なってはどうか、と考え出してから、NPO法人についていろいろと調べてみた。

国際的にはサード・セクター
まず、NPO法人等の非営利組織が、国際的には、公的組織(ファースト・セクター)でも営利組織(セカンド・セクター)でも無い、サード・セクター(第3セクター)と呼ばれていることをご存知だろうか。

第3セクターというと、良く自治体で「3セク方式」などと呼ばれているものと混同されてしまいそうだが、「3セク」は、日本特有の呼び方である。詳しくは、以下のリンク先(特に3節)を参照されたい。

サード・セクターは、公的な機関でも、営利目的の組織でも実現しづらい課題、を解決するための組織、として、昨今重要になりつつある。実は「位置情報サービス」も、社会貢献という側面や、広く薄く利用され、収益性が難しい、ということを考えるとサード・セクターに向いているのかもしれない、と感じている。

■NPO法人とは
では、NPO法人とは、具体的に何なのだろうか。

実は、何人かの知人に「NPO法人をやろうと思ってるんだよね」と話したところ、「なんでベンチャーじゃないの?」とか「なんだか怪しげ」だとか「運営が大変なんじゃない?」などと心配されてしまった。

NPO法人とは、法的にはNPO法(特定非営利活動促進法)に基づく団体で、所轄庁(都道府県や政令指定都市)の認証を受けて、登記を行なわれた法人である。非営利活動だからといって、行なう事業はすべて無償で行なわなければならない、というわけでは無い。単に、利益を社員で分配しない、という制限があるだけである。もちろん株式も無いので配当は無い。

他にも、社員(会員)の資格に制限を加えることができないことや、宗教活動や政治活動を主たる目的とできないことなどの条件がある。また、定款や活動の報告(事業報告や会計報告)などは、すべて所轄庁で閲覧することが可能であり、透明性が高く、公益性の高い法人であるといえる。

決して「怪しい」とか「大変」とかいうものでは無いはずである。
(もちろんすべてのNPO法人が怪しくない、と言っているわけではありません。内閣府のWebには、怪しいNPOの情報が掲載されています。)

■実は沢山あるNPO法人
NPO法人の設立認証をしてみて始めて分かったのが、実は世の中にはNPO法人が沢山ある、ということ。全国で4万5千ものNPOが認証されているのだ(24年3月末)。また、各県にはNPOセンター、といった類の支援組織(場所)があり、NPO法人の活動を様々な側面で支援している。

ボランティア活動を行なった事がある方なら分かるかもしれないが、こういったセンターに集まっている方々の表情は皆、明るく、見ていて気持ちが良い。例えば、名古屋市の場合、活動のための簡単なミーティングの場所が用意されており、外国人のための語学講習や、様々なミーティングが開催されており、いつも賑やかだった。

こういったNPOセンターに行けば、確かに、行政にも、私企業にもできない活動がここで行なわれている、ということが実感できる。しかし、こういったリアルでの活動に対し、ネット上のサイバー空間ではどうなのだろう。

■サイバー空間でのボランティア
昨年の東日本大震災では、Google のPersonFinder や sinsai.info などに代表される様々なネット上での活動が注目された。現地への直接支援やボランティアは出来ないが、ネット上で名前の入力やデータの整理ならできる、という人も居たはずで、こういったシステムがそういった方々の善意を実際の力に変えることができた。

こういったサイバー空間でのボランティアは、災害時だけのものでは無いはず、と私は思う。例えば「駅.Locky」には、自分が使わないような時刻表データを登録・管理して下さっている方々が沢山いる。

確かに鉄道マニアが頑張っている、という事は否めないが、他の分野(例えば、観光や、町おこし、弱者・障害者支援など)であっても、様々な情報の登録を行なって下さる方々が、きっといると私は考えている。

「サイバー空間上の位置情報登録ボランティア」という新しい枠組みを提供することにより、きっと善意のデータが集まるのではないかと思うのだ。

■みんなのための位置情報サービスを目指して
ボランティアの皆様に提供して頂いたデータは、可能な限り有効活用することが望ましい。これまで、様々な企業が行なってきた多様な位置情報サービスは、残念ながら、データを各社の中に取り込んで利用することが主に想定されている(もちろんAPIなどを通じた外部からの利用も可能なサービスもあるが、限定的である)。

我々は Lisra : 位置情報サービス研究機構を通じて、可能な限りオープンにデータを扱う仕組みを構築していきたいと考えている。

ぜひぜひ応援いただきたい。

#実は位置情報サービスに関する研究活動の構想について書こうと思っているのですが、なかなか本題にたどり着けないですね。次回こそは。。。

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