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日本版Googleマップはすぐ作れるはずなのに

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Googleマップは便利です。私の場合は、サイボウズのスケジュールに往訪先の住所を必ずいれる(もしくは入れてもらう)ので、出張時をはじめ、会食や取材でもサイボウズKUNAI経由で住所からワンクリックでGoogleマップを呼び出し、スマートフォンで見ながら現地までたどり着きます。

スマホ用OSではAppleとGoogleが激しく戦っていますが、地図サービスはAppleもGoogleマップを使っています。
もちろんデスクトップパソコンでもほとんどがGoogleマップを使っているような状況ですから、世界の地図のスタンダードになっていることは間違いないでしょう。

しかし、Googleマップに使われている地図データはGoogleが作成したものではありません。
Googleマップの右下には、ZENRINのクレジットが入っており、この地図は住宅地図で有名なゼンリンが作成したものであることがわかります。自分の家を探すのに外国製の地図を使うのはなんとなく変な感じですが、ゼンリンだと安心感がありますね。(って普通はそんなこと考えないか)

カーナビに続き、スマートフォンの普及によって従来以上に地図データの電子化による利便性は上がっています。
場所データは、緯度と経度(あと高度)による座標で世界的に通用する地理アドレスですから、同じ座標を使うことで、Googleマップのみならずカーナビの地図でも何でも同じ地点を呼び出すことができます。

日本でも同じような試みは、実はGoogleマップが普及するもっと前から始まっています。
国土地理院が作成する電子国土基本図がそれです。
実は1995年の阪神・淡路大震災の直後より計画が進められ、96年からシステム化が始まっています。
Googleがこの世に生まれたのは同じ1996年ですが、Googleマップが登場するのはずっと後の2004年です。
日本の方は、2002年に小泉内閣の下で作成された e-Japan重点計画 - 2002で推進の方針が出て、コツコツとシステム化がすすんできました。
一部の自治体ではこの電子国土基本図を使って、都市計画図を作成したり、また今回の震災では文部科学省が放射線量等分布マップ拡大サイトに利用したり、また国土地理院自身も震災後の復興に役立てるために、建物各戸の配置まで高い精度で表す2500分の1の縮尺の地図「災害復興計画基図」の作成を進めています。(日本経済新聞10/25

また、国土地理院は電子国土ポータルでこれらの情報の活用方法を公開しており、一部の地図はここで見ることもできます。(はっきり言って使いにくい)

しかし、これらの貴重な地図データも見る人が少なければ宝の持ち腐れです。
スマートフォンの普及で誰でも地図データを気軽に扱えて、その上に写真やインフラ状況、建物やイベントなど様々な情報をマッピングして電子国土を作成することは簡単なのに、それが海外の民間企業のインフラ上に構築されているのはGoogle好きな私でも残念な気がします。

可能性としては甚だ小さいのですが、もしアメリカと日本の間の回線が切られてGoogleマップが使えなくなった瞬間、これらの貴重なインフラ情報は全く使えなくなってしまいます。
そこまでいかなくても、Googleマップの商用利用は一定のアクセス数を超えた瞬間に有料となり、その金額は決して安くなく、企業がGoogleマップを活用して大きな地図基盤を作成するのは難しい状況です。

Googleマップで使われている地図も日本製、そしてシステムとしても日本製のものがあるのであれば、それを組み合わせて国産Googleマップを作成することは、さして難しい話ではないはずなのに、そこに本腰を入れないで小さい枠の中で、小さくない予算を電子国土ポータルにつぎ込んでいるのが大変残念です。

復興のみならず、インフラ基盤のメンテナンスや医療・介護、地域コミュニティなど、地図情報をベースに作成される各種国土情報は、今後の日本にとって充実したサービスの提供とコストの削減が期待できるとても大切なものです。

現状では前述の日経新聞に出ていた「災害復興計画基図」も国土地理院のサイトでは公開されていません。
それなりに理由はあると思いますが、レイヤ構造とかセキュリティ保持の規格はとっくに出来上がっているはずです。

使いやすいWebAPIを開発・公開して、スマートフォンのサンプルアプリケーションを出して、と今の国土地理院の予算ではさして難しくない投資を行えば、国民の財産として有効活用できるはずです。
税金を使うのですから、ぜひ役に立つ日本版Googleマップを作って欲しいものだと思います。

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