ITmediaエンタープライズ編集部のしたっぱによる気ままな編集後記+α。気ままなコラムと書評、最近面白かったニコニコ動画の紹介記事が主なコンテンツになる予定。軽い気持ちで読んでください。

1時間で理解できて一生役立つ、優れたアイデアマンになるための"心構え"

»

idea.jpg評価 ★★★★(4)

 「いいアイデアが浮かばんなぁ」

 多くのビジネスパーソンが日々そんな悩みを抱えていると思う。面白い記事のアイデアはなかなか浮かばないものだし、新しいビジネスモデルや新商品の構想から明日の献立まで、人がアイデアを求められる場面はあまりにも多い。

 個人的には、アイデアが必ず浮かんでくるという必勝法はないというのが持論だ。しかしながら、アイデアを浮かびやすくする方法、浮かぶ可能性を増やす方法はあると思っている。その方法を記してある本が、今回紹介する「アイデアのつくり方」(阪急コミュニケーションズ)である。

 本書は巷にあふれかえるビジネス書のようにある種の「答え」が書いてある本ではない。それもそのはず、アイデアが必ず浮かぶ方法などないのだから。どちらかといえば、この本に書いてあるのは、アイデアが浮かぶための準備、言わば"心構え"のようなものだ。

 その心構えとして書いてあるのは、たった2つの事柄だけ。1つはアイデアにまつわる"2つの真実"、もう1つはアイデアが浮かぶまでの"5つのステップ"だ。新書程度の小さな本で、本編の長さは60ページ程度。人によっては1時間足らずで読めてしまうだろうが、その内容は多くの示唆に富んでおり「一生あなたを離さない本」という帯の煽り文句もあながち間違いではない。

●アイデアにまつわる"2つの真実"

 アイデアとは「何も無いところから突然現れる何か」だと考えている人が多いが、そうではない......と著者のジェームズ・W・ヤングは本書で説明している。彼は26歳で広告業界に身を投じ、斬新な広告のアイデアを世に出した凄腕の広告マンだ。確かにもっともアイデアが求められる類の仕事だといえる。

 さて、確かに人は自分の経験したことを基にしか考えられない(あるいは今までの経験したことを否定する形で"新しさ"を作る)。その意味でまず「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」という原則を挙げている。なので、この組み合わせを発見する能力こそが、いいアイデアを作る能力だ。これは「事物の関連性を見つけ出す才能に依存する」というのが筆者の論だ。これが2つの真実である。

 事物の関連性を見つけ出す才能というのはやっかいなもので、いわゆる"頭が切れる"のような地頭系の話になってしまうと身も蓋もない話になってしまう。しかし、筆者はそこには答えを出しており、「社会科学」の書籍を読むことで訓練可能だとしている。すでに働き始めている人も、学生でも実践しやすい。ありがたい話だ。

●アイデアが浮かぶまでの"5つのステップ"

 では、アイデアが浮かぶまでには何をすればいいのか。それはアイデアが「既存の要素の新しい組み合わせ」であるところに答えがある。まずは既存の要素を集めなければいけない。そして、その要素を基にアイデアを突き詰めて考える。ここまでは一般的な話だが、そのためにも日々の勉強や知識のインプットを怠ってはいけないのだろう。

 そして次のステップが意外と難しい。考えることを放棄し、普通に日常生活を送るフェーズに入る。煮詰まったときは息抜き――そんな話はよく言われているが、息抜きが正解というか、息抜きがなければ次のステップに進めないとなれば話は変わる。ビジネスならばアイデアに時間の制限もあるだろう。ここは勇気が必要になる。

 そして朝起きたときや電車に乗るときなど、何でもないときに突如アイデアが閃く。閃いたアイデアは他人にレビューしてもらうことも重要だという。これもなかなか人によっては勇気がいる行動だが、他人からのアドバイスによってアイデアが化ける(使い物になる)という経験は多くの人があるのではないだろうか。

●60分で読める発想法の「教科書」

 本書で述べていることはたったこれだけ。もちろん本文はもっと長いし、これ以外にもさまざまな話がある。解説をしている地球物理学者の竹内均氏の文章も非常にためになるものだった。

 発想法やデザイン思考といったアイデアにまつわるビジネス書を読んでいる人であれば、上に挙げた内容は"当たり前"のことかもしれない。それはそれで良いことだ。しかし、その内容を60ページという短さで過不足無くまとめていること、半世紀ほど前、1965年にその初版が出たことを考えると、間違いなく万人に勧められる不朽の名著だと感じる。

 こうして生まれたアイデアを人にどう伝えるか、という点が気になった方は日経BP社が販売している「アイデアのちから」(チップ・ハース、ダン・ハース著)をオススメする。こちらもまた機会があれば、書評として紹介したい。

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する