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もしも洞察力があったなら……。

【広報かるた】・【ご】ごちそうさま。一度は記者に言ってみたい。

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えー、ほぼ広報として立ち入ってはいけないギリギリのエントリーではありますが、ここは勇気を振り絞って踏み込んでみます。

広報の担う重要な役割の一つに、メディアリレーションズ、すなわち、記者との良好な関係を構築し維持する、というものがあります。メディアリレーションズとは、事業の戦略を普段からわかりやすく説明し、記者の基本的な疑問に答え、その事業会社の情報窓口として認識されることです。そして、期の始まりや年末年始などには、ざっくばらんな懇親会を設け、こうした記者の方々と一献交わしにいったりするわけです。
 
最近はずいぶんと減っていると実感していますが、10年ほど前、いやそれ以前だったでしょうか、毎晩のように様々なメディアの方々と様々な広報の方々が夜な夜なメディアリレーションズを展開されているというお話を聞きました。簡単に言うと、夜な夜な飲みにいっているってことですね。
 
(一部の)記者の方はこうした夜な夜なリレーションズに慣れたもので、お互いに仕事の延長での会だと理解しているものですから、お会計のときには至極当然のように広報担当者が持つことになります。そのために広報担当者は年間ないしは月間ベースでこうした夜な夜なリレーションズのための予算をとったりしているのです。
 
※ところで、こうした費用を負担してくれる寛大な会社には感謝をしなければなりませんね。
 
そのお会計のときに、慣れた方は、礼儀正しく、ごちそうさま、といってくれます。お会計は事務的に、速やかにこなします。これを多いときには月に何回かこなします。そして、会社で許されている場合には経費精算をします。この経費精算を何回もします。結構大変だったりします。なので、その夜な夜なリレーションズがきっと明日の仕事を楽にしてくれるだろうと、幻想を抱きながら、経費精算をします。
 
 
しかし、現実はそんなに甘くない。
 
 
ちょっと飲んだからって、記事が出やすくなったり、内容が優しくなったりすると思ったら、大きなしっぺ返しを受けるでしょう。仲が良くなることと、相手に事業内容を理解してもらうことは本質的に別物であるとまず前提を持っておいた方がいいでしょう。少なくともそのようなプライドが記者にあるものだと尊重することは、とても重要な姿勢だと思います。
 
では、何のために夜な夜なリレーションズをするのか。
 
その大きな理由は、BAU(Business As Usual:日常)では表われない、本当に必要なときに、本当に困ったときに一度だけ使える「Grip」と言われるカードを、保険として持つためです。本当に困ったときに、相談できる相手をできるだけ多く作っておく。そのことで、様々な逆風にさらされる可能性がある広報担当者は、その難を逃れられないまでも、痛手を微かにですが、抑えられるのかもしれないのです。本当に困ったときに相談する相手がいなければ、あるいは連絡先を知っていても、ニュースリリースを送りつけるだけの関係だとしたら、孤立、孤軍奮闘を強いられてしまいますよね。だから、真剣に向き合って、プロのジャーナリストと相談できる環境を整えておくのは広報担当者のスキルの一つと言ってもいいでしょう。
 
しかし、注意が必要です。物事にはバランスというものが求められます。夜な夜な同じ人とリレーションズを行ったり、過剰なお会計を毎日のように処理したりすると、それはいったいなんなのだ、必ず親分から突っ込まれます。ですので、リーズナブルで、コミュニケーションがちゃんとできる場所を選びましょう。会の趣旨がほかの人にあまり聞かれたくない内容の場合は個室を選ぶことを忘れずに。
 
夜な夜なリレーションズが続くと、実は広報担当者も少しくたびれてきます。なので、リレーションズがまずまずの記者に向かって、たまっている経費精算を思い描きながら「今日はごちそうさまでした!」とたまには言ってみたくなるのは人情ですね。
 
ところで、最近では割り勘、自腹文化がとてもよく浸透しているので、私自身、多くののケースで割り勘にさせてもらっています。そういう意味では、夜な夜なリレーションズというのは、もはや仕事を離れた関係作りという、ソーシャルネットワーキングの意味合いが強くなってきたのかもしれません。
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