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もしも洞察力があったなら……。

【広報かるた】・【お】オンタイム、集まり悪くも会見開始。

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ご存知でしょうか。写真や映像や記事にはほとんど反映されることはありませんが、記者会見というのは様々なドラマに満ちています。

会見を準備するにあたって、会場の調整、登壇者との様々な攻防、資料を準備して印刷に至るまで(最近は印刷をしない企業も増えてきていますが)。数多の困難を乗り越えて、万全の態勢で当日に臨むわけです。

そしてその会見のオーナーである広報にとって、一番緊張するのは、開始五分前。この時間を私は「魔の五分間」と名付けています。

招待した記者がちゃんと来るかどうか、登壇者に予告した想定人数に至るかどうか、どぎまぎして過ごしています。なので、記者が一人ずつ会場に現れるたびについつい「いらっしゃいませ!!」などとマクドナルドのようにスマイルばっちりと声高に叫んでしまうんですね。ここはお店じゃないよ、とたしなめることもしばしば。(ちなみに、違和感がないのは、朝なら、おはようございます。午後なら、こんにちは、です。)

他社との業務提携や主力・人気製品の発表会などはわりと出足もいいでしょうが、中には「びみょー」な会見をやることもあるでしょう。そのときは、この「魔の五分間」で、奈落の底にゆるりと落ちて行くかのような心境になるはずです。

しかーし、時計は待ってくれません。定刻となったならば、はじめなくてはなりません。

*特段の事情がない限り、定刻に開始するのは、記者への心証を悪くしない重要なポイントです。集まるか集まらないかは発表者側の都合であり、そもそも予定時刻までに集まった記者に失礼になるからです。いえ、もっと実務的にいえば、「定刻より発表」を予告していながらその通り実施しないのは、速報系記者の報道機会をむやみに奪うことになりますので要注意です。

なので、定刻になったら、会見をはじめます。

会場に50席用意していて、記者が3人しかいなくても、はじめるのです。

駆け出し広報の皆さん、ぜひ知っておいてください。これは、かなり辛いです。
穴があったら入りたくなります。

すかすかの会場に興奮する登壇者はめったにいません。

建前として、記者はあくまでも発表の内容を吟味して報道するのであって、周りの記者の数なんか関係ないはずです。本当はそうであってほしい、と思うこともあるでしょう。

しかし、記者も人の子。そもそも記者のイデオロギーを「野次馬根性」だとしましょうか。(かなり乱暴ですがご容赦ください)

野次馬は、好奇心の塊であると同時に、「人々が関心を寄せる物事に関心を持つ」性質を持っています。

反対にいえば、「人々が関心を持たない物事には関心を持ちにくい」

といえます。

つまり、会見場のアンビエントすなわち「雰囲気」「空気」はとても大事なのですね。

なので、良くできた広報パーソンは、きちんと、事前にどのくらい集まりそうか過去の履歴や他社の発表状況などの情報を収集し、ビッグデータならぬ「スモールデータ分析」を行って予測をします。そして、間違っても3人しか集まらない会見に50席を用意するようなまねはしません。状況に応じてエラスティック(elastic=伸縮自在)に変更をしていくのです。きちんと事前予測をやれば、間違っても打ち合わせの時に登壇する役員に向かって「50人来ます!」などと言うことはありません。また、来たのが3人であっても、会場が小さめの会議室だったならば、記者はその場の空気に大きな違和感を持つことはなく、取材に集中することができるでしょう。

余談ですが、お仕事で成功するための秘訣は「常に期待値を越えて行くこと」につきます。期待値が上がったならば、それを越える実績を積まなければなりません。一方で、記者の数に期待が寄せられたならば、広報は真っ先にその期待の矛先を変えなければなりません。本質は、会見の成功とは、記者の人数ではない。アウトプットと、それによって引き起こされるステイクホルダーの思考や行動の変化なのだと。

そして、「50人来ます」と言って3人しか来なかった、ということがあったならば、貴方の期待の向け方とあげ方について見直す必要があるでしょう。

20130220_0823

*期待値とのギャップに関する代表格は、「ラーメン」だと思います。ラーメンランキングで上位にあり、友人仲間から「うまいようまいよ」と勧められて食べに行ったらそれほどでもなかった、という経験をお持ちの方はいるでしょう。その反対に、何の期待もせずぶらりと入ったラーメン屋がすごくおいしかった、という経験も。人の印象というものは、往々にして相対的である、という思考でした。

*誤植を修正しました。ご指摘ありがとうございます。

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