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夏目房之介の「で?」

「ビッグを語ろう」18回は萩尾望都先生

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少女マンガ研究者には案外穴場かもしれないと思いますが、「ビッグコミック」2018.9.25号Vol.18の「ビッグを語ろう」18回は萩尾望都先生。戦後ベビーブーマーの少女マンガ革命を担った世代のマンガ好き女子が、どのようにビッグを読んでいたかがわかる、貴重な証言だと思います。
萩尾さんは、さいとうさんの絵が好きで『ゴルゴ』が衝撃だったと語ります。「当時の女性漫画家はよくパロディーを描いたものです。自分の漫画に出てくる狙撃者の顔をゴルゴにしたりね。あの眉毛を描きたくなるんですよ(笑)」といったあと、「ゴルゴは[略]どこか中性的なんです」と重要な指摘を。いわれてみればそうですが、一般的には「男性的なキャラ類型」とされるので、女性読者にとってのゴルゴ像の鋭さを感じます。

さらに、ゴルゴに「恋はしてない」けど、『佐武市』は「サブちゃんはお布団に誘って、イチさんとは花火を見にいきたい。この二人は色っぽいです(笑)」と、これまたのちの「やおい~BL」的想像力につながる女子の「読み」を指摘されてます。 ビッグの位置付けを、当時の女性マンガ青年層からしていただきたいところです。何よりも、当時の一般的な男子読者は僕も含めて女性・少女マンガには見向きもしませんでしたが、女子マンガ読者はバイリンガルで、それがのちの文化的な展開に影響していきますしね。

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