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夏目房之介の「で?」

山田参助『ニッポン夜枕ばなし』リイド社

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山田参助『ニッポン夜枕ばなし』リイド社
 あの『あれよ星屑』の山田参助の、ホントにしょうもないエロ艶笑漫画。とはいったい、何かといえば、最近はほとんど見ることのできない種類の漫画なのである。表紙とタイトルを見ただけでも、わかる人にはわかるのだが、これは完璧な昔の「大人漫画」のパロディというかオマージュというか、僕などの世代は「そうそう、こういうしょうもないエロねただったよねえ」的な漫画なのである。あるがしかし、今となってはおそらく、ほんとにただのしょうもないエロであって、それがまた山田参助らしい作品でもあったりする。この手の「大人漫画」は、少なくとも60年代半ばまでは、日本の漫画の主流だった。タイトル絵含めて4ページの艶笑噺がひたすら続く。「大人漫画」の中でもとりわけ、明らかに小島功を模倣している。絵、線、タイトルにそれはみて取れる。「女ギツネ退治」の絵をみれば、すぐわかる。しかし、「干支くらべ」の女性をみると、そこには竹久夢二~林静一もいるのだった。つまり、この国に戦前から続く美人画的な漫画の流れを継ぐともいえなくはないのであって、見どころはそこなのだった。とりわけ、女性の裸体の背中側の曲がり具合というか、S字的な曲線の美学というか、そういうエロのよさを堪能してほしいのねんのねん。まあ、あえて見なくても、ああたの人生に何の影響もないとは思うが。

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