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夏目房之介の「で?」

パコ・ルカ『家』小野耕世監訳、高木奈々訳 小学館集英社プロダクション

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かつて『皺』で「老い」を優しく描いたパコ・ロカのやや自伝的ともみえる作品『家』。父親の不在と、休暇を過ごす家族の家を主人公に、そこに久しぶりに出会う兄弟家族が、父の不在に向き合う物語。『皺』もいい作品だったが、これはさらに作家の成熟を感じさせる、いい出来だと思う。こちらもトシを喰ってるぶん、親近感のある主題だ。スペインの作家だが、色彩が物語を彩るということがよくわかる。一般の日本のマンガでは発展しなかった手法だ。また微妙な「間」を、ほとんど似たような場面の連続で作り、確定できない気分や「内面」的な手触りを感じさせる手法は、一般には日本マンガに特有といわれがちなものだが、そう簡単にいいきれないのがわかる。

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