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夏目房之介の「で?」

TBS『逃げるは恥だが役に立つ』年末年始再放送

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http://www.tbs.co.jp/hot-jyouhou/201712121130.html

大みそかと元旦で、TBSで『逃げ恥』全話再放送第一部、第二部をやった! なるほど、なんでDVDレンタルがないのかと思ったら、これだったか。じつは、後半部しか観てなかったので、観たかったのだ。最初のほうを観ると、星野源があまりにハマり役なので、思わず笑ってしまう。

ドラマ放映時に後半だけ観た時、最初はひたすらガッキーの可愛さとコメデイの作りの面白さだった。けど何かハマちゃって原作も読んで、これがもともと「家族」イメージの崩壊と、その再構築の話なのだとわかって、なるほど、と思ったのだった。エンディングの歌は、見事にその主題を歌詞にしてるわけだ。それと、踊れないけど、この踊りはたしかにおぼえてみたくなるねー。

元旦の第二部で、はじめて全体通して観て、やはり面白かった(こういうことは、あまりない)。かつて70年代に当時の彼女を通して、僕は「少女マンガ」に出会った。いわゆる「24年組」では山岸凉子、『ベルばら』や一条ゆかりのほか、陸奥A子の「ロマコメ」も好きだった。テレビの『逃げ恥』は正しく「ロマコメ」の構造を継承したハッピーエンドで、カタルシスがある。と同時に、67年生きた人間からしても、さまざまな局面で面白くみられる部分があって、そこにはきちんと「今」がある。

とくに最終回では「ひとはみなそれぞれ自分に「呪い」をかけてしまっていて、そのことに気づかないが、呪いが解ける瞬間を味わうこともあり、それはほぼ必ず他者によってもたらせられる」というテーマは、意識的に織り込まれていた。原作はもっと主題を前に出しているので、興味をもった人は読むといいと思う。アラフォー設定のユリさんは、原作ではもっと上で、しかも彼女が長年保ってしまった「処女」のクリアが、連載の最後の主題になってたりする。

日本の少女文化がこの半世紀で積み上げたものが、テレビメディアで娯楽化されているのは、この作品に限らないし、先端的な思想から評価もされにくいだろうけど、僕にはけっこう大事な局面のように思える。特にここ数十年の「女性」の思想の表明については。

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