夏目房之介の「で?」

NHK「日曜美術館」 小島櫻谷と漱石

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http://www4.nhk.or.jp/nichibi/x/2017-11-19/31/7135/1902745/

 NHK「日曜美術館」の、漱石が文展で酷評したという木島櫻谷の回、観ました。櫻谷の作品は僕は直接観てませんが、まあ今我々が観ればなかなかデザインの美しい日本画で、きれいな絵ということでしょう。ただ、近代日本においてねつ造された伝統であった「日本画」という分野自体あまり好きではないので(とくに人間の絵は気持ち悪い)、あまり多くは語れない。

 それと、ただ、漱石が大正期に自らの抱えた近代の矛盾、日本でねつ造されつつある近代文学、美術の持つ身もだえのような矛盾感は、今の我々にはもう観て取れなくなっているということでしょう。
 取材では「ちょうど現代の我々が村上隆作品に居心地の悪さを感じるとすれば(それが狙いでもあると僕は思ってますが)、それと似たような居心地の悪さを感じ取ったんじゃないでしょうか」といったんですが、カットされてました。いい比喩だと思ったんですが、村上隆への忖度で削ったんじゃないかと思います。こういうとこがなあ。  

 それと、僕の紹介ナレーションで「漱石研究の第一人者でもある」などという、知ってる人間にとっては一体何の必要があってこんな大嘘をつくのか理解のできない箇所があったので、それは指摘しておきます。ほんと、迷惑な話です。

追伸  制作側に僕の紹介ナレーションについてメールをしましたところ、再放送では削除するとの返信がきました。

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以下、参考までにフェイスブックでの当該記事への投稿に僕が応答したコメントを再録しておきます。
小形克宏さんへの応答
 制作者は美術の専門家ではない印象を受けましたね。美術史的には常識に類する理解だと思いますが、きょとんとしてました。あるいは視聴者には難しいとの判断か。いずれにせよ、視聴者をバカにしてるとしか、僕には思えませんが。ただ謝ったのは僕の判断で、記事を読むとあまりにも無根拠にけなしてる気がしたからです。僕の判断は、どんなに知的で専門的な知識をっもった人でも、いったん専門外の、それも趣味の領域になると、案外専門家からは「こんなこと、平気でいっちゃうんだ」というたぐいのことをいってしまう、という一般的な傾向についてで、これは漱石でも例外ではない、という点でした。
ここもバッサリ切られて、謝ったとこだけ、多分単純に面白かったので拾ったんでしょう。番組的には、あまり著名でない木島櫻谷をひたすら讃えたい、というモチーフだけでしょうから、どういうことか理解したい、という番組ではなかったといえます。まあ、よくあることなので、それほど目くじら立てるこっちゃないですが、「漱石研究の第一人者」という誤解のほうが僕にとっては重大。
篠原章さんへの応答 近代のはらむ矛盾、というのは、今も続いてるってことですよね。ポストモダンの議論は、ややもするとそれを覆い隠す効果がかつてあったのかもしれないとも思いますが。ただ、近代化をすすめようとした時代を、尻馬にのって批判するのは、まるで他にも道があったみたいですが、必ずしもそうではなかったので、そこは慎重な見方が必要なところです。だからこそ漱石は精神を病んでまで苦しんだんでしょうから。
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