夏目房之介の「で?」

NHKBS「アナザーストーリーズ 古今亭志ん朝」

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 NHKBSで午後9時から放映。もうね、最後のほう、談志との関係や正蔵(元こぶ平)の話のあたりから涙出てきちゃってしょうがなかった。
 貴重だったのは、1962年、志ん朝24歳、入門4年、19人抜き異例の真打昇進時の「明け烏」(ほかに「火焔太鼓」もやってる! 文楽と志ん生の十八番だ)の録音を一部聞けたこと。これがベラボーにうまい。いや、すごいなあ。
彼を真打に推挙した父・志ん生は、披露目直前に脳溢血で倒れ、しかしこの昇進で戦後衰退し始めていた落語を立て直すことになったという。彼にごぼう抜きにされた者の中から、奮起した春風亭柳朝、橘家円蔵、三遊亭圓楽、そして立川談志が落語界を支えてゆく。
 僕はまさにその時代とともに落語好きになり、彼らと、彼らのうえにまだ柳家小さん、三遊亭円生がいた落語界を見てくることができた。とりわけ、その間に志ん朝という現代の「名人」が成立してゆく過程に立ち会えたことを幸せに思っている。
僕が落語好きになり、自分の趣味としてあらためて落語を選んだきっかけは、立川談志『現代落語論』(三一書房 1965年)だった(東京にこの時代に生まれた子供にとって落語はラジオやテレビを通じて接する一種の生活的「教養」だった)。
 そんな人間にとってこの番組は、番組構成のデキとか以前に、涙腺を刺激する同時代的な確認作業だった。談志さんとパーティで会って気にいられたことや、まだこぶ平さんだった正蔵さんと対談し、その後末廣亭で彼の「子別れ」を見て、泣け過ぎて楽屋にご挨拶にも行けなかったことも思いだされた。また、柳家小三治さんに、飲み屋でたまたま志ん朝、談志がふと出会ったときの、微妙で緊張感のある雰囲気のお話を伺ったことも。
 番組の最後のほうで、そんな状況のとき、談志が飲めない酒を飲んで志ん朝に「お前、志ん生を継げ!」といい、志ん朝は「口上に全部つきあってくれるかい?」と返し、談志は「やります!」と答えたという挿話があった。それを語った談志の弟子は、志ん朝も談志も嬉しかったんじゃないか、といっている。もう、泣けるじゃないですか。
この番組、落語家やその周辺にインタビューしているので、全員がどことなく落語っぽい話し方で、何となく嬉しくなってしまう。

明日6月13日(火)放送の「アナザーストーリーズ 運命の分岐点」(NHK BSプレミアム)にて古今亭志ん朝が特集される。
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