夏目房之介の「で?」

雲田はるこ『落語心中』10巻 完結編(講談社)

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えぇ~、なんでございますな、この、、、、月日のたつのは早いもんでございますが、雲田はるこ『落語心中』10巻で「堂々完結」ということでございましてな。登場人物、いきなり3倍速でトシとっちまいまして、大団円の巻というようなわけで、、、。これほどに落語愛に満ちたお話もなかなか、なかろうじゃあないという、じつにコノ、しみじみとした終わりございました。前巻から「死神」というお噺をひきつぎまして、さまざまな噺をマンガでやっていただいて、落語好きには噺の調子を想像しつつ楽しめたという、まことにけっこうな作品でございました。「死神」というお噺、あたくしも大好きなんでございますが、その笑いと恐怖と不思議と突拍子もなさのあわいをゆくような雰囲気に、人の浮世のしょうもなさがいい感じでまじっておりまして、楽しましていただいたようなわけでございます。

それにしても何ですな、劇中、八雲師匠がお亡くなりになって、死出の旅に出てゆくあたりの描写には、ちょいと『千と千尋』を思わせるような情景もあり、ああ、そうか、あれあ異界だから、じつは臨死体験でもあったわけだわな、あどと妙に感心したりね。あるいは関川夏央、谷口ジローの『「坊っちゃん」の時代』最終巻の、漱石の「修善寺の大患」での臨死体験的イメージなんかも思い出したりいたしましたなあ。いずれにしても、最後は軽みのある、すぅっと抜けたようなよさがありましたですなあ。なんだか、終わっちまうのが名残惜しいような、めでてぇような、へんちくりんな気持ちでございますな。

えー、一言、この場をお借りしまして、いっかいの落語好きよりお礼申し上げようという、いささか殊勝な心持になったような次第で。ありがとうございました。おあとがよろしいようで。

Comment(1)

コメント

ご無沙汰しています。
「死神」私も好きです。
原作がグリムの童話で「死神の名付け親」。それをうまいこと落語に落とし込んだと思います。一番いいのは、本の話にはない「ろうそくをすげ替えればおまえの寿命がのびるよ」とそそのかすところですね。必死になって火を移そうとする当たりの描写は落語だから表現できたものでしょうね。
ただ、私はこのマンガは拝読しておりません。すみません。

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