オルタナティブ・ブログ > 夏目房之介の「で?」 >

夏目房之介の「で?」

ヤマザキマリ、とり・みき『プリニウス完全ガイド』追伸

»
 本書のⅦ「酒とマンガと古代ローマ」という座談の中で、こう語っています。
「欧米のSF小説やSF映画にも、古代ローマ帝国がモデルになっているものがたくさん見受けられます。あちらの人たちは、ローマ帝国の繁栄と衰亡の歴史が基礎教養にあるから、高度に発達した文明もやがて衰亡を迎え、後退するーーというダイナミズムに対する感覚や歴史的記憶が埋め込まれています。/でも日本は有史以来、なんとなく右肩上がりできていて 、〔略〕感覚的にわかりづらい。」
この「感覚」、イタリアに行くにあたって何冊か歴史の本を読んで、僕もあらためて感じたものでした。
 生産力も社会システムも芸術も文化も、何もかもが滅亡し、はるか以前の状態に戻ってしまうことが、こんな風にありうるんだ、という認識でした。テクノロジーで世界の情報、経済、人や文化がむずびついて動くようになった現代では、同じことは起こりえないし、ローマのように滅亡し、歴史から消えてしまうことがあるとはなかなか考えられない。が、長い目をもって見れば、ありうるんじゃないか、とも思える。そんなことを考えると、やはり重要な観点ではないかと思えてきます。
Comment(0)