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夏目房之介の「で?」

京都MM土田世紀原画展

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京都MMにいってきました。

2014629mm京都国際マンガミュージアム「土田世紀全原画展ー43年、18,000枚。」
いい展示で、面白かったです。原画を床に(もちろんカバー付きで)敷き詰め、その上を歩くという経験は、なかなか刺激的です。マンガを描いてきた人間として最初は「うっ」となるけれども、圧倒されます。感動した場面などが、そこここにあり、不思議な感じになります。

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土田の原稿には「念」がこもっているような迫力があり、それが積み上げてある、というだけで、ただの紙ではない存在感が伝わってきます。観ているうちに土田世紀を読みたくなる。濃い!

Seikiこの図録もいいです(1500円+税)。もろに大友克洋の影響を受けた初期習作から、どうやらこれでは自分らしくないと思ったのか、画風を変え、そこに様々な試行錯誤が感じられます。僕のみたかぎりでは、畑中純風、『ハイティーンブギ』あたりの暴走族少年風などを連想しますね。でも、独特なエイちゃん風の鼻の穴と口のとがりは、一貫してます。ただ、後期になるにしたがい、やはりこの鼻の穴と口も様式化いってしまうのは、本人も感じていただろうと思いますが、切ないものがあります。大友風であっても、初期の作品の絵には、うまいヘタを越えた切実なよさがありますねえ。それにしても、これらの原画を死後燃やすようにいった土田の遺志を守ろうかどうしようか悩まれた末に公表されたという夫人の決断に感謝です。

あと、テーブルに置かれたノートには、世界各国の来館者のサインがあって楽しいです。じつに様々な国から来てるんですね。ちなみに僕も書いてきました。

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