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夏目房之介の「で?」

バリ報告2014 その1

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今年は、一年間の疲れが尋常ではなく、さすがにバリに行く直前に胃腸の調子がよくなくて、エド鍼灸院に通って何とかつくろいましたが、バリでリラックス状態(自分で「バリ化」と呼んでいる)に入るのに、少し手間がかかりました。
また、ここ数年通っていたウブドの山側の宿の隣に大きなホテル建設が行われており、やむなく別の宿をとりました。

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ウブドの中心に近いビスマ通り裏にある水田の中のコテージ。写真の右奥のやや古いコテージ「スリーデウィ」の二階にまずは投宿。水田の中に、というより、昔のウブドを知る人間からみると、コテージに囲まれて残った水田というべきですが。それでも、夜中に蛍をたまに一匹見ることができました。このあたりは、ビスマ通りも、そこからちょっと歩くと出られるウブドのメインストリート(王宮前の通り)も、たしかにむちゃくちゃ便利ですが、まあいってみれば原宿の裏道に泊まったような感じもあります。

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「スリーデウィ」の部屋の窓からの風景です。ごらんのように水田をはさんでコテージが林立しています。

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ビスマ通りを奥に行くと、こんな感じでコテージ普請中です。あらたに建設されるコテージは、たいていクーラーやTVのついた、かつての宿から考えれば高級なスタイルで、当然高く、逆にいうと僕などの泊まる宿はどんどん減ってゆく傾向にあります。

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ビスマ通りはすでに欧米白人中心にスノッブに楽しむおっしゃれーなお店が立ち並び、こういう現地の人が入る食堂は少なくなってます(ここしばらく大量にみる韓国、中国の観光客は、昔の農協さんみたいに、たいてい都市部や海岸リゾートからバスで集団でやってきて、どどどと帰るので、宿泊客はあまり見ない)。でも僕などはこういう店のほうが親しみがあっていい。味も、正直観光客向けのレストランより僕にはおいしい。

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というわけで、以前から泊まっていた山のほうに行き、知ってはいたが泊まったことのない「ビンタンパリ」という宿に移る。目の前に広い庭があり、まずは八卦掌の練習ができそうだと思ったのも大きな理由。もっとも、芝の地面は意外とでこぼこで練習しにくい上に、日が昇ると尋常でない暑さで、練習どころではないんですがね。

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庭には、池と庵風の場所もあり、周囲に残る水田も見渡せて、夜はまだ蛍の乱舞が楽しめます。バリでも農薬を使い始めたというので、それもいずれなくなるでしょう。そういえば、昔は当たり前にコテージの天井にいた大きなイモリも見かけなくなった。ちょっとさみしい。小さいのはいるし、鳴き声もあるけどね。

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これが「ビンタンパリ」の庭からの水田の眺めです。東アジアの伝統風景でもある水牛と鴨の群れも、やがては消えてゆくかもしれない。今おきているホテル建設バブルは、聞くところによるとジャカルタの金持ちがバリのレンタル別荘としてゴルフ会員権みたいにしてコテージなどを買うブームによるものだそうです。つまりインドネシアなどの高度経済成長が背景にあるわけで、日本がかつて経験した「豊かさ」への道の影響であるわけで、その意味で僕の「さみしさ」は一観光客の「わがまま」に過ぎないということです。とはいえ、昔のバリの記憶が鮮明な僕個人は、ますますバリの田舎に投宿先を探さねばならないんですが。

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