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夏目房之介の「で?」

ソクーロフ監督『太陽』

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 アレクサンドル・ソクーロフ監督『太陽』(SUN)。観てきました。
 銀座の小さい館(昔はエロ映画やってた)前の地下道に、この暑い中えんえんと整理券の行列が・・・・.。単館上位だったのが、あまりの評判に2館になったらしい。口コミで広まったらしいけども、それにしても・・・・ねぇ。
 ただ、僕も話を聞いたとき「観たい」とは思った。
 何しろ、主人公は敗戦前後の昭和天皇。役者はイッセー尾形。
 これ聞いただけで「あっ! そのテがあったか! 

日本じゃ撮れない映画だったなぁ。つーか、思いつかないかもしれない。それもイッセー尾形とは、よくぞキャスティングしたなぁ」と思った。
 イッセー尾形って、彼自身の一人芝居はむちゃくちゃ面白いけど、普通のドラマで人とからむと、まるきりフツーなんだよね。でも、昭和天皇という、人とコミュニケーションしているようで、じつはできないかもしれない場所にいた人間をやるとなれば、彼以外考えられないほどだ。案の定、イッセー尾形の映画といっていい。そこんとこは面白い。侍従長(?)の佐野史郎もいい。桃井かおりの皇后は・・・・う~ん、ちょっとな。
 史実そのままの再現ではない。天皇という、「現人神」とされた人物の「人間宣言」に至る過程を描くために、色々と脚色しているはずだ。基本的にフィクションとして観るべきだと思う。そうすると、なぜこういうフィクションになったか。昭和天皇という存在は、どんな角度から興味深いのか、という面白さがある。
 ただ、例によってロシアの映画なので、何しろ描写がゆったぁ~~りしている。かつてタルコフスキー『ソラリス』を観たときも「面白い映画だけど、これハリウッドで一時間半にカットしたら、すげー面白いのになぁ」と思ったくらいだから(じっさい、ハリウッドでのちにリメイクされたが、全然ダメだったらしい。観てないけど)、いささかタルい。僕は基本、ハリウッド娯楽映画の、さくさくしたカットの人なのだ。眠かったせいもあって、前半気づくとフッと気を失って部分部分記憶が落ちていた。御前会議のあたりから動きが激しくなったので、ちゃんと観られたけど。
 そういえば、庵野監督がきてましたね。

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