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ビジネスプランの第一歩:切実なニーズの構造を探し出す方法

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先週末(2015年6月6日、7日)から週末に早稲田大学で行われるプログラムに参加している。
文部科学省が推進している「グローバルアントレプレナー育成促進事業(EDGEプログラム)」に採択されている 13校のひとつ、早稲田大学の WASEDA-EDGE プログラムだ。

文科省のEDGEプログラムの目的は以下。

日本におけるイノベーション創出の活性化のため、大学等の研究開発成果を基にしたベンチャーの創業や、既存企業による新事業の創出を促進する人材の育成と関係者・関係機関によるイノベーション・エコシステムの形成を目的としています。

具体的には、専門性を持った大学院生や若手研究者を中心とした受講者が起業家マインド、事業化ノウハウ、課題発見・解決能力及び広い視野等を身につけることを目指し、受講者の主体性を活かした実践的な人材育成の取組みへの支援を行います。特に、短期的な人材育成プログラムへの支援を行うのみではなく、ベンチャー関係機関、海外機関、民間企業との連携を行うことで関係者間の人的・組織的ネットワークを構築する取組みを重点的に支援し、持続的なイノベーション・エコシステムの形成を目指しています。

今回参加しているのは、WASEDA-EDGE のコースの中でも最もハードなもののひとつと思われる ビジネスモデル仮説検証プログラム プレミアムコース 。 受講申し込みにあたって、題材とするビジネスプランの概要を提出し、その内容を審査されて受講者(チーム)が採択されるというものである。 倍率は2~3倍と思ったよりも少なかったこともあってか、無事に僕のチームも参加できることになった。

このコースのベースとなっているフレームワークは、ビジネスモデル・キャンバスである。
bizframe.gif

このビジネスモデルキャンバスについては、また別の機会に詳細を紹介したいと考えているが、デザイン思考・手法を使ってでてきたアイディアを、よりビジネスモデル、ビジネスプランとして具体化し、検証していくために非常に有効なフレームワークだと思う。この2日間だけでも、目から鱗のことがいくつもあった。

そのビジネスモデル検討にあたり最初に検証しなければならないことが、切実なニーズの構造を探し出すこと、確認することである。

ハーバードビジネススクールのセオドア・レビットは言った。

顧客は1/4インチのドリルを求めているのではない。1/4の穴が欲しいのだ。

顧客の目的は、「穴を簡単に綺麗に開けたい」ことであって、「電動ドリルを入手することではない」。ということ。
この場合の電動ドリルは手段であって、目的ではない。
目的= Jobs To Be Done (JTBD) は、穴をあけることである、という考え方である。

この穴をあけたい、というニーズが切実かどうかを検討するフレームは以下である。

1)目的は?(JTBD):穴を綺麗にあけたい

2)課題や不満は?:キリであけようとしても、力が弱く穴がうまくあかない

3)今とっている対策は?(現状対策):力のある人に頼む(しかない)

4)その満足状況は?:すぐにやってもらえない

5)抜本対策となる手段は?(潜在ニーズ):電動ドリル

そして、その潜在ニーズが切実かどうかは、3の現状対策に対する満足状況とそれに要するコスト、5の抜本対策と成り得る手段によってもたらされると思われる満足度とコストによって検証できるというものである。

これを IoT を活用した農業IT に適用してみると以下のような感じとなる。

1)目的は?:農作業の最適なタイミングを知りたい。

2)課題や不満は?:経験とカンがないとできない。

3)今とっている対策は?(現状対策):熟練者にタイミングを教えてもらう(しかない)

4)その満足状況は?:熟練者は素人にはなかなか教えてくれない。競合となるので教えてもらえない。

5)抜本対策となる手段は?(潜在ニーズ):IoT を活用した農地の温度湿度などの継続的な計測とクラウド上の農作業ベストプラクティスDBとの照合による農作業タイミング通知システム

その他の IoT、BigData、クラウド、セキュリティ等にも比較的簡単にあてはめて検討できそうである。さっそくやってみたいと思っている。


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