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スマートデバイス、ソーシャルメディア、クラウドコンピューティングが可能にする新しいワークスタイル

「パーソナル」「ボーダレス」「マルチタスク」化するワークスタイルと、その先に求められるサービス

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個人ブログには以前書いたことがありますし、セミナーや勉強会でもずっと同じ話しかしていないので、もしかすると「もう何度も聞いたよ…」と飽き飽きしている人もいるかもしれません。でもオルタナブログをご覧のみなさんの多くは僕のことなんて知らないだろうと思いますし、今後ブログを書いていく上で、ここだけは最初に主張しておかないと後々困ったことになりそうなので、改めて書いておきたいと思います。

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ワークスタイルの変化を象徴する3つのキーワードとソーシャルリクルーティング

ソーシャルリクルーティングを語る上では、その先にあるワークスタイルを考える必要があると僕は思っています。働き方や賃金・報酬体系がテクノロジーの変化によって大きく変わろうとしているのに、リクルーティングだけを語っていてはいつまでたっても結論は見えません。

スマートデバイス、クラウド、ソーシャルグラフ、およびそれを支える通信インフラの整備により、ワークスタイルは今後劇的に変化します。そしてその変化を象徴するキーワードは、「パーソナル」「ボーダレス」「マルチタスク」である、と僕は考えています。

どういうことなのか、もうちょっと噛み砕いて見ていきましょう。

1. 「パーソナル」化

企業が主体となるのではなく、個人が主体となるワークスタイルに変化する、という意味です。モバイルインターネットの普及により、端末を通してクラウド環境にデータが蓄積され、個人と個人がソーシャルグラフで結び付く。個人所有のスマートフォンのセキュリティ問題は各社が頭を悩ませていることと思いますが、むしろ法人主体のワークスタイルそのものに無理が生じていると考える方が自然でしょう。

2. 「ボーダレス」化

これは国境だけを意味するわけではなく、あらゆる境界線がなくなるというイメージです。たとえば、国籍、距離、会社、性別、年齢、時間などなど。スマートフォンやタブレットで仕事が完結するようになってくると、たとえば主婦の方だって結婚して出産して家にいなきゃいけない。だから退職します、だったと思うのですが、それが家でも仕事ができるようになると変わると思います。毎日定時に出社する必要もありませんし。定年退職したシニア層の方も同じです。体が不自由で出社できない方も。あとはもちろん距離の壁なんていうものもありません。

3. 「マルチタスク」化

上記のように時間や距離の壁がなくなると、1つの会社に束縛される必要がなくなります。そうすると、人によっては複数の会社と雇用契約を結ぶ、なんていうことも可能になるはずです。一部すでに始まってると思いますが、これがより一般化していき、裾野が拡がるのが今後数年に起きる変化だと思います。

ソーシャルウェブの最大のインパクトは、個人のあらゆる面でのリスクヘッジを可能にしたことだ。

上記の3つの変化と一緒に考えなければならないのが、テクノロジーが個人にどんな影響を及ぼしたか、ということでしょう。僕は一言でいうと、「リスクヘッジ」に尽きると思っています。クラウドによってサービス運営時に個人情報データを保持する必要がなくなり、漏洩リスクも軽減できる。クラウドサーバを使えばトラフィックが増えてもサーバダウンする心配ないから維持コストも必要ない。固定費が抑えられれば事業運営リスクはさらに軽くなる。オフィスも一緒です。駅から近いビルに高い家賃を払うなんてばかばかしい。コワーキングスペースを使ったりカフェを使えば仕事だってできる。仮に起業に失敗したりリストラされたってソーシャルグラフ上に自分のデータや知人が蓄積されていれば次の仕事を見つけることももっとラクになると思います。クラウドファンディング、ソーシャルレンディングみたいなサービスを使えば資金集めもずっと簡単に可能になる。こういうあらゆる分野でのリスクヘッジが可能になるのが、ソーシャルウェブの本質ではないかと思っています。

リクルーティングはどう変わるのか。

この辺まで話してやっとリクルーティングについての議論は焦点があってくるでしょう。Facebookページの作り方とかばかり話していても、本質にはたどり着かない。Facebookを単なるリクルーティングデータベースとしてしか見ないと、母集団の少なさや反応の少なさに愕然とするだけです。転職意欲もわからないですし。ソーシャルリクルーティングを語る上では、以下の変化を捉えて議論する必要があります。

A. 1人が複数の企業(もしくは個人)と労働契約を結ぶ社会になる。

これはさっきから言ってることですが、「入社」「就職」という概念が崩壊することを予見しておかないといけません。仕事の概念も、今よりもっと多様化するでしょう。たとえば、「今日の15時までに資料必要だから誰かデータ探して!お礼に1,000円あげるから!」みたいな仕事や、「数日間旅行に行くから犬のエサやって」みたいな仕事が生まれてきます。仕事に対する報酬も変わると思います。個人間のNFCなんかもはじまってきたら、決済スキームも劇的に変化するでしょう。

B. 「さあ転職するぞ!」というような意識の境界線がなくなる。

これまでは1社に所属するのが前提でしたから、今勤めている会社を辞めて転職する、ということが当たり前だったわけです。そういうのが当たり前だったから、転職顕在層/潜在層という切り分けが存在しているわけですが、もはや今後はこの切り分けもなくなっていくでしょう。複数の仕事を掛持ちすることが前提になると、仕事を探す、という行為は単なる営業活動でしかありません。ソーシャルメディアは潜在層にアプローチできる、みたいな意見もあるようですが、あと5年もすればがらっと変わるでしょう。

C. 当然のごとく、人事機能も個人に移管される。

上記の変化が起これば当然といえば当然なのですが、個人同士がソーシャルグラフで結びつき、個人間のやりとりがベースになるので、人事機能も個人に移管されるのは必然です。これを認識しておくと、現在の採用活動もプロジェクト型になるとか、全社員リクルーターといった考え方もピンと来ると思います。

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と、ここまでは個人ブログで書いたことの引用なのですが、ここ数日で上記のようなワークスタイルに求められるサービスって何だろう?ということも考えたので、少しメモしておきたいと思います。

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これからのワークスタイルに求められるサービス

①個人ベースの仕事の受発注を支援するサービス

個人として仕事の受発注を行うケースが増えてくると、事務手続きがとても煩雑になります。請求書作成やタスク管理、はたまた確定申告など。とても地味な作業が多く、しかもミスが致命的になってしまいますし、ここに時間を取られると生産性に大きなダメージがあります。一見地味ですが、「請求書.jp」のように、ここをサポートするサービスは非常にニーズがあるでしょう。

②出会ったことのない個人間の信頼を担保するサービス

ボーダレスにあらゆる個人が結びついて仕事をやりとりする際には、これから取引する相手が信頼に足るかどうかはとても重要な問題です。FacebookやLinkedInで知人から推薦を受ける、というのも1つの手ですが、もっと取引相手を広げる必要も出てくるでしょう。「Klout」のように個人の影響力をスコア化したりするだけでなく、もっと細分化されたスキルセットに対してのモノサシとなるサービスが必要になってきます。また、スキルだけでなく「この人はちゃんと期日通り納品してくれる」「この人は確実に支払いをしてくれる」といった信頼性も非常に重要です。たとえばAmazonのような企業がここのインフラを担ってくれると非常に便利かもしれません。

③個人のポテンシャルに投資するサービス

いわゆるクラウドファンディングのようなサービスですが、「CAMPFIRE」や「READYFOR?」のようなイベントベースでの投資ではなく、個人のポテンシャルや夢に投資し、固定収入を保証するようなクラウドファンディングが徐々に生まれ、シフトしていくのではないかと思っています。月数万円であれ固定収入が担保されることで、個人主体でより大きなビジネスが動いていく、そうすることで個人パワーが完全に法人に匹敵するレベルになるでしょう。

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だいぶ長くなってしまいました&脈絡がなくなってきましたが、僕の考えるこれからのワークスタイルとそこで求められるサービスについて今頭の中にあるものをすべて吐き出してみました。特に最後の求められるサービスについては、ぜひみなさんのご意見も伺いながらブラッシュアップしていければと思います。

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