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私は会社を経営する傍ら、これまで採用の“現場”を見て、さまざまなアドバイスを行ってきました。また、学生のビジネススクールの運営にも関わっており、最近の学生の生の声にもたくさん触れています。本ブログでは、「いまどきの採用・教育・若者」と題して、これまでの経験で得たノウハウを少しでも現場で活かせる為の情報発信を行っていきます。

企業と学生ではこんなに違う「コミュニケーション能力」「リーダーシップ」の意味

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企業が新卒採用で「求める人物像」や「求める能力」で必ず挙げるものの
一つに「コミュニケーション能力の高さ」「リーダーシップ」があります。

学生もそれを充分承知していて、面接などでコミュニケーション能力の高さを発揮した経験や
コミュニケーション能力の高さを活かしてリーダーシップをとった経験談を多く語ります。
しかし、その話をよくよく聴いてみると企業が考えている「コミュニケーション能力の高さ」「リーダーシップ」と
学生が考えるそれらとの違いに気づく方も多いのではないかと思います。

今回はこの違いはなぜ生まれるのか、また、その違いを少しでも埋めていくにはどうすればいいのかについて
お話出来ればと思います。

●学生のコミュニケーション能力発揮場所は気の合う仲間内が基本

前述したようにコミュニケーション能力の高さを自分の長所として語る学生は多いと思います。
しかし、例に挙げる話を聴いてみると「サークル活動で問題にぶつかり、みんなが落ち込んでいた時に
一人ひとりと話をして、みんなのモチベーションを高めて成功に導いた」とか「最初の飲み会で上手くしゃべれない人とでも
共通の話題を探り当て、その人を盛り上げることが出来た」・・・みたいな話が多いように思います。

勿論、それすら出来ない学生もたくさんいる訳ですから、それはそれで素晴らしいことだと思いますが、
企業が考えている「コミュニケーション能力の高さ」とはやや違うと思います。

無理も無いことですが、学生は年齢が近い学生同士の付き合いが基本で、サークルなど同じ趣味嗜好を
持った仲間内でのコミュニケーションですので、元々理解しあえる部分が大きい、という前提があります。

多少の意見の違いはあるかもしれませんが、基本的に価値観が近い仲間が集まっている中でのコミュニケーションですので、
そもそもコミュニケーションが比較的とりやすい環境と言えます。

しかし、企業には年齢、今の生活環境、会社での立場・・・等々が異なるいろいろな人が集まって一つの組織を形成していて
自分と考え方や価値観が180度違う人もいます。

ので、当然のことながら、そうした中でのコミュニケーション能力の高さと学生が培ってきた
コミュニケーション能力の高さはそもそも発揮される環境が大きく違いますので、その辺りもよく考えながら
話を聴く必要があります。

●本当のトップを作らない学生の「リーダーシップ」が意味するところ

中には「僕は同じ大学の仲間だけでなく、他大学の人も集まる起業サークルのトップとして
何百人の学生をまとめていましたので、コミュニケーション能力の高さとリーダーシップがあります」という学生もいます。
これも大変素晴らしいことです。

しかし、他大学も交えてその規模が大きくなったかもしれませんが、起業に興味を持って集まった仲間の集まりで
あることには変わりありません。

私自身も起業したい学生の支援にも関わっており、学生と話す機会が多いのですが、2人で起業したけれど、どちらが社長になるかを
決めずに起業準備を進めているケースをよく見かけます。

どうして決めないのかを尋ねると「何事も2人で話し合って決めているので問題ありませんし、
それで上手く回っていますので、大丈夫です」といった答えが返ってくることが多々あります。

つまり、学生が考える「リーダーシップ」とは、「みんなで物事を進めていく際にいかに上手くとりまとめていけるか」ということが
主眼に置かれていることが多いのです。

反面、企業でのリーダーシップとは「統率力」であり、そこには必ず「最終意思決定」「決断」「決断による責任」が伴います。
その点で学生が考えている「リーダーシップ」とは大きく異なっているのです。

●企業が考える「コミュニケーション能力の高さ」「リーダーシップ」の素養を見るためには

わかりやすいところで言えば、体育会系の主将等は企業が考える「リーダーシップ」に比較的近い素養を
兼ね備えていると言えます。

お正月に箱根駅伝を観た方も多いと思いますが、優勝するかどうか、シード権を獲得するか否かによって、翌年の部の予算配分が
大きく変わってくる大学も多いので、「責任感」や「統率力」「プレッシャーを跳ね返す力」等がないと務まりません。
ラグビーも試合中の様々な判断は監督ではなく、試合に出ている主将がすべて行いますので、同じです。

ので、体育会の幹部経験のある学生を採用したい企業が多いのもうなずけるところです。

また学生は極度の緊張状態の中で自身の頭にあることを口頭でわかりやすく他人に伝えたり、友達同士の話の中では
結論から端的に述べるといったこともあまり求められません。

そのあたりの素養を見ていくためには、採用プロセスの中で「他己紹介」を取り入れたり、何かケースを与えて
起承転結の結から語らせてみるといったことをするのも効果的ですが、1週間程度の短期であっても「体験入社」等
を実施し、少し時間をかけて素養を見ることが出来れば理想です。

言うまでもありませんが、就職する企業の中やお客様の中には自分と価値観が違う人や
気の合わない人がいるのが普通です。

価値観の違いや利害関係がある中で対処ができる人材を採用・教育していくには、今回のテーマである、
企業と学生で「コミュニケーション能力」「リーダーシップ」の意味の捉え方がそもそも違う、ということを
しっかりと認識した上で学生と接触し、判断することが重要だと思います。

以上、何かのご参考になれば幸いです。

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