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【書評】『友達の数は何人?』:Google+はSNSの進化か?

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インターシフト / 単行本 / 256ページ / 2011-07
ISBN/EAN: 9784772695244

ある調査によると、Facebookユーザーの平均友達数は229人であるそうだ。これは米国での利用に関する調査であり、数年前の調査数字が130人だったことを考えると、Facebookにおける利用歴の長さに比例して、増加していく傾向にある模様だ。おそらく、日本の場合は、ここまでの数字に到達しておらず、150人程度ではないかと思う。

一般的にひとりの人間が実社会において関係を結べるのが、150人くらいとされている。150人を超えるとひとりひとりをきちんと認識することができないのだ。そのため、会社の組織の大きさや、軍隊の大きさなどもその数字に基づいて構成されているという。ちなみに、この数字のことを、ダンバー数と言う。

本書は、そのダンバー数を発見したロビン・ダンバー氏によるもの。進化心理学という分野に関する幅広いテーマのエッセイが凝縮されている良冊だ。

◆本書の目次
PartⅠ ヒトとヒトのつながり

第1章 貞節な脳(男と女)
第2章 ダンバー数(仲間同士)
第3章 親類や縁者の力(血縁)
第4章 ご先祖さまという亡霊(民族)

PartⅡ つながりを生むもの
第5章 親密さの素(触れ合い・笑い・音楽)
第6章 うわさ話は毛づくろい(言葉・物語)
第7章 今夜、ひとり?(魅力)
第8章 エスキモーのあいさつ(キス・匂い・リスク)
第9章 ずるいあなた(婚姻)

PartⅢ 環境や人類とのつながり
第10章 進化の傷跡(肌の色・体質)
第11章 進化の邪魔をするやつはどいつだ?(進化と欲望)
第12章 さよなら、いとこたち(絶滅の罠)
第13章 こんなに近くてこんなに遠い(人類の起源)
第14章 ダーウィン戦争(進化と創造)

PartⅣ 文化・倫理・宗教とのつながり
第15章 人間ならではの心って?(志向意識水準)
第16章 カルチャークラブに入るには(文化)
第17章 脳にモラルはあるのか?(道徳)
第18章 進化が神を発見した(宗教)
第19章 頭を使って長生きしよう(健康・知性)
第20章 美しい科学(芸術)

目次を見るだけでお分かりのように、進化心理学の取り扱う範囲は、実に広い。脳、認知、進化論、宗教、文化、集団心理学にいたるまで様々だ。とりわけ、この分野が昨今注目を集めているのは、SNSなどの普及によって、集団のつながりを可視化した状態で確認することができるようになったからである。今ならば、話題のGoogle+などと照らし合わせて本書を読むと、非常に興味深い。

人間の「自然な」集団サイズを知るには、いまだに文明化されておらず、とくに狩猟と採集で生活する集団に着目するのとよいそうだ。食べ物を集めるために泊まりがけで移動する時は、一般的に30~50人程度の小集団が形成される。この集団は不安定で、途中で人の出入りなどもあるものとする。

反対にいちばん大きい集団は「部族」。文化的なアイデンティティでまとまっており、部族の規模は老若男女あわせて500~2500人といったところ。そして、その他の集団として存在するのが「氏族」。成人儀式や定期的な儀式のときに重要な役割を果たすこともあれば、狩猟場や水源を共有する集団として扱われることもある。これら氏族の平均人数は153人であるという。

注目したいのは氏族の平均人数と、Facebookの平均友達数が非常に近いということである。また、Twitterにおけるフォロー数/フォロワー数の合計数字は、部族の集団サイズ500~2500人におさまるユーザーが、多いのではないだろうか。Facebookは氏族的、Twitterは部族的なツールというわけだ。そして、それらを踏まえると、後発で作られたGoogle+のサークルという概念は、30~50人程度の複数の小集団で構成されることを意識して作られているではないかという仮説が立てられる。

また、人間と動物を区別しているものの一つに、「相手の心のうちに思いをはせる」というのがあげられるそうだ。この能力は、Google+を利用していると顕著に意識させられるものである。誰かが自分をサークルに追加された時に発せられる「○○さんが、Google+であなたを追加しました」というメッセージが、非常に意味深なのである。メッセージが届くたびに、自分が一体何というサークルに追加されたのかに、想いを巡らせる。その関係において、自分と相手の認識にギャップがあったとしても、それも一興だ。

さらに、人間の一雌一雄の関係において重要なのは、「パートナーにあわせて自分の行動を変える能力である」という話も紹介されている。自分のキャラクターは、場に依存するということだ。この点においても、言わずもがなであるだろう。サークル毎の情報発信の仕分けができるGoogle+の特徴は、現実の人間関係におけるキャラの使い分けということと、非常にフィットする。

集団におけるつながりこそが、人を人たらしめるべく進化させてきた。人間の進化とSNSの進化も、まるでイタチごっこのようである。人間の進化がSNSを進化させ、さらにそのSNSの進化が人間を進化させてきたのだ。そして、もっとも後発のGoogle+は、さらなる人間の進化を生み出すことができるのだろうか。

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