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【書評】『人体冷凍』:戦慄のノンフィクション

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講談社 / 単行本 / 418ページ / 2010-11-19
ISBN/EAN: 9784062162029

テッド・ウィリアムスという野球選手をご存じだろうか?メジャーリーグ最強のスラッガーと謳われ、4割の打率をマークしたこともある国民的英雄である。しかし、その輝かしい栄光とは裏腹に、晩年には彼の人生に暗い影を落とすような出来事があった。その遺体は今、カルト教団の手によって頭部のみが冷凍保存されているのだ。その教団の正体とはいかなるものか?本書は、そのカルト教団「アルコー延命財団」を内部告発した著者による、戦慄のノンフィクションである。

クライオニクス・・・「病気で死んだ人間の身体を冷凍保存する行為。その病気の治療法が開発された未来に甦り、新たな人生を送ることを主な目的とする。人体冷凍保存術」。それが彼らの信仰の拠り所でもある。彼らはそれが、「高度に医学が発達した未来への救急車」であると信じているのだ。

彼らは未来に対し三つの賭けを行っている。それは復活を遂げるまでに、その会員の死因となった病気を克服する術が見つかっていること。そして、冷凍保存で損傷した傷が回復する術が見つかっていること。また、頭部のみ冷凍保存している会員については、仮に胴体がなくても脳によってあらゆる制御が可能な技術が開発されていることである。仮にそうして、無事復活をすることができたとして、果たして心が耐えられるのかどうか・・・

著者はアルコー財団での日々を重ねるにつれ、その杜撰な実態を知り、やがて告発を決意する。しかも、彼とその家族はその告発によって、財団から命を狙われる羽目にも陥ってしまう。その勇気には敬服し、同情も感じるのだが、本書の記述を追っていく中で「途中で、おかしいと気付くだろ!」という突っ込みどころが満載なのも事実である。そういった意味で、本書をコンテンツとして割り切るのなら、そのストーリーテーリングについては若干の物足りなさを感じる。しかし特筆すべきは、この話がすべて実話であり、今でもその財団が存在して、HPも見られる状態になっているということなのである。

話の内容の凄まじさに加え、グロい写真も掲載されていたりするので、全ての人におススメという本ではない。ただし、ある意味突き抜けている一冊でもある。とにかく刺激を求めたいという方は、是非ご一読を。


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