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【書評】『メッシュ - すべてのビジネスは<シェア>になる』:メッシュはビジネスの未来か?

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徳間書店 / 単行本(ソフトカバー) / 262ページ / 2011-02-17
ISBN/EAN: 9784198631178

シリコンバレーの名物企業家、リサ・ガンスキー氏による一冊。表題の「メッシュ」とは文字通り網の意味で、ソーシャルメディアに網の目のように繰り広げられた<シェア・ビジネス>の総称。自動車、家、ファッション、エネルギー、オフィス、スタジオ、機械工具、食品、金融など、幅広いビジネスに関するアメリカでの事例が纏められている。ちなみにメッシュという言葉自体は、シェアと同義に捉えて構わないと思う。

◆本書の目次
第一章:メッシュを理解する
第二章:メッシュで何がどう変わるのか?
第三章:メッシュなモノづくり
第四章:メッシュは時代を先取りする
第五章:メッシュで信頼を勝ち取るには?
第六章:生態系としてのメッシュ
第七章:メッシュはオープンである
第八章:メッシュ戦略とは?
第九章:メッシュの種をまこう
◆メッシュビジネスとは?
①シェアをする
②ウェブとモバイル情報ネットワークを駆使する
③有形のモノや具体的なサービスを持つ
④顧客との接点がソーシャルネットワーク上である
という4つの特徴を持つソーシャル時代の新しいビジネス。

近しい存在としてレンタルがあるが、レンタルとメッシュは似て非なるものである。一つのモノを時間で分けて分割するのがレンタル、メッシュは複数のモノをニーズに分けて分割しているのが特徴である。車の例で言うと、レンタカーは特定の場所に行かなければ借りられない静的なサービスであるのに対し、メッシュは生活の基盤に車を用意しニーズとウォンツのマッチングを動的に行っている。車におけるメッシュビジネスは、輸送サービスではなくて、情報サービスなのである。
このような<シェア>の類の概念に触れるときには、多少懐疑的な視点で見るようにしている。シェアの行き着く先が、経済の緊縮化につながるなら、必ずしも人を幸せにはしないと思うからである。その点本書においては、シェアの意義が明解にまとめられており、特に以下の点に興味を覚えた。
・メッシュに向いているモデルとして、高価格、使用頻度の低いものに市場を限定してること。すなわち、所有することの煩雑さを敬遠し、本来なら購入しなかったはずの人にも、モノをマイクロ化することで新しい需要を生み出しうるということである。
・モノを所有するという束縛から解放されることは、固定費が減り、本当に興味があるものだけにコスト投下を集中できるという側面を持つということ。
本書を読んで、メッシュと呼ばれる新しいサービスは、ビジネス、個人、双方の側面において大きな変革をもたらす概念であるという確信を持った。同じモノを購入する場合でも、100万円以上の出費で5年以上使うものとして考えるのと、数千円の出費で数時間使うものとして考えるのでは、モノ作りの段階から広告のあり方まで大きく変わってくる。

それにしても驚かされるのは、アメリカという国のスピードの速さである。リーマンショックからわずか三年で、新しい価値観を生み出し、それに基づくサービスが続々と具現化されているのだ。バブルの後遺症を未だ引きづっている日本との回復力の差に、うらやましさすら覚える。

一点気になったのが、TOYOTAプリウスのブレーキ問題について触れ「トヨタは議会と社会を欺いた」と記述されているところだ。トヨタ側に問題がないことが明らかになった今、訂正すべき内容であり、誤ったシェアであるだろう。それ以外は説得力があり、良く纏った良書である。

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