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【書評】『警察の誕生』:規制された自由

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著者: 菊池 良生
集英社 / 新書 / 208ページ / 2010-12-17 発売
ISBN/EAN: 9784087205718

警察の歴史を追いながら、近代ヨーロッパ成立までのからくりを探るという、野心的な一冊。
古くは古代ローマから中世、近代ヨーロッパまで、各国の警察を巡って繰り広げられるストーリーは、人間の本質を様々な視点から浮き彫りにしており、非常に読み応えがある。

◆本書の目次
序章 :江戸の「警察」組織
第一章:古代ローマ「警察」制度
第二章:中世の「警察」制度
第三章:中世の都市の発展
第四章:嫌われるウィーン市警備隊
第五章:パリ「警察」の成立
第六章:警察大改革前のイギリス旧警察
第七章:「ありがたき」警察
最終章:近代警察の誕生
本書は、著者の立ち位置が一風変わっている。さながら”お喋りなナビゲーター”といったところだろうか。警察という堅苦しいテーマの話が、すんなりと頭に入っているのも、この著者のキャラクターによるところが大きい。また、各章のねらいが前章の終わり付近に明記されていることも、本書を読みやすくしている。もしやと思い、著者の前作『ハプスブルク帝国の情報メディア革命』を取り出し”あとがき”を見てみると、やはりある。本書の予告めいたものが明記されており、「人は自由を追い求めて遂に警察国家を作り上げた」というドストエフスキーの言葉が紹介されているのだ。

なるほど、「警察」について考えるということは、すなわち「自由」について考えることなのである。各国の歴史を追う中で最も印象的だったのは、「民衆が勝ち取った自治は、多くの場合、民衆自身の手によって投げ出される運命にある」ということだ。警察のない自由を追い求めていくと、必ず不自由に陥るという、不思議なパラドックスがそこには成立している。規制とは、自由にとって必要悪な存在なのである。

自由と規制、このやじろべえのような両者の均衡点は、近代イギリスにおいて、ある種の結実を迎える。自由と規制の境界線を、あいまいにすることが生み出した、社会的受容によってである。しかし著者はこの均衡点も、昨今の「相互作用の均質化崩壊」により、制度疲労をおこしていると警鐘を鳴らす。しかし、いつの時代、どこの国においても、大切なのは個々人の在り方ということになってくるだろう。つまり、我々自身が規制の輪郭を明確に認識し、その中の自由を十分に謳歌する、ということである。

一点気になったのが、冒頭の切り出しで紹介される「江戸の岡っ引き事情」が、全体にどのように寄与しているのか、さっぱり分からなかったことである。著者自身も、自由を謳歌してしまったということなのだろうか。それでも、著者の次回作は非常に楽しみである。

※参考エントリー
【書評】『ハプスブルク帝国の情報メディア革命』:ソーシャルメディアの原点




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