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ライフワークとしての学びを考えます。

そのリーダーが成功させてくれるかどうか。やる前からメンバーはわかっている

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2008年9月より、日本フィル首席指揮者となっているアレクサンドル・ラザレフさんが、2014年7月16日日本経済新聞に紹介されていました。

ラザレフさんは、お国もののロシア音楽を、これでもか、これでもか、と繰り返し演奏して5年半。
「石の上にも3年」という言葉がありますが、5年も継続すると、どちらかというとドイツ音楽寄りの日本人にもロシア音楽の素晴らしさが浸透してくるものです。
今では、確かにラザレフさんと日フィルの定期は人気公演となっています。

そのラザレフさん、やはりリハーサルに命を懸けるタイプです。

    ・・・・(以下引用)・・・・

ロシアにはヤギを捕まえるなら大きなヤギを狙えということわざがある。大きなヤギとは満場の聴衆を感動させることだ。楽団員を前に練習を始める時には、大きなヤギを狩るためにどの道を行くべきかを指揮者が知り尽くしていなければならない。そのための道順探しをリハーサルまでにずっと一人でやっている。
道は一本。間違えれば成功しない。楽団員にはその指揮者が大きなヤギを捕まえさせてくれるかどうかわかる。リハーサルをしながら指示を出す指揮者もいるが、私は道順を示すだけ。他人が指揮したCDを聴いても意味がない。楽譜を徹底して読み込み、自分の頭の中にある解釈が100%ベストという信念に至らなければやる意味がない。

楽団員には毎回しっかり楽譜を読み込ませ、十分な準備をしてリハーサルに臨ませている。一生懸命に演奏すれば聴衆は足を運ぶ。当然のことだ。しかし今、世界の管弦楽団はそんな真摯な態度で音楽に臨んでいない場合が多い。首席指揮者をはじめ指揮体制の問題だろう。楽団の演奏ぶりは指揮者次第なので。課題より高い水準に達することだが、演目を広げるよりも、いま演奏している曲でアッと言わせる。その一曲を極みにまで持って行って聴衆に感動を与えることが大切だ。

    ・・・・(以上引用)・・・・

私は、今は亡き日本の誇る大巨匠、指揮者の朝比奈隆さんを思い出していました。

朝比奈さんは93歳という年齢で亡くなる直前まで、これでもか、これでもかと、飽きもせず同じ曲ばかり演奏しつづけてきた指揮者です。

そして、朝比奈さんの演奏の特徴は、リハーサルにあります。
メロディ以外の内声を充実させ、弾けないところはパートごとの反復練習を徹底させる。
リハーサルで、この演奏会が成功するかどうか、勝負は本番前にすでに決まっていたのだと思います。

このリハーサルでの徹底した職人仕事と、本番での溢れるような情熱が、朝比奈さんの感動的な音楽を作り上げていました。
本場のヨーロッパでも聴くことができないほどの深みを持って私たちに感動を与えてくださいました。


朝比奈さんが振る、ブルックナー、ベートーヴェン、ブラームスはチケット発売日に完売するほど。
現在、クラシックでこれほどまで人気がある演奏会はないでしょう。
東京での公演でも関西弁が飛び交い、スーツ姿のビジネスマンが大阪から新幹線でやってきているのです。朝比奈さんの地元である大阪での人気と手厚い応援が感じられました。

現代の指揮者は、どんなものでも器用に振ることができなくては仕事がありません。

「人気があれば、どんなものでも演奏する」。

そういう業界になってしまっているのです。

それは、聴衆が求めるからに他なりません。

音楽文化は聴衆が育てるのです。

聴衆が指揮者を育てる、オーケストラを育てる、そんな文化になってくれたらと願わずにはいられません。


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