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ライフワークとしての学びを考えます。

一人のスーパーマンは大企業にとって居場所がない

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「職場で合唱をやっている人とカラオケに行ったらあまり上手くないので意外だった。」

と言っている方がいて、なんとなく分かるような気がしました。

合唱団の指導やピアニストをしていてよく意外な思いをすることがあります。

作品によっては、いつも皆で歌うだけではなく、ソロの部分が入ることもあります。
そうすると、ソリストを選ばなくてはなりません。そうすると一人で歌うことに慣れていないこともあると思うのですが、想像以上に歌えないのです。皆で歌うと上手なのですが、一人だとまったく力を発揮できない。
もちろん、中には「玄人はだし」なみに上手な人もいるのでしょけれども、私はそこまでの方にあまりお目にかかった事はありません。

そして、合唱団にいらしてくださるような方は、あまり「人前で一人で何かする」ということに積極的ではありません。
ものすごく実力があって一人を強く望むならソリストの道を選ばれるでしょう。やはり、私の周囲でもソリストの勉強をした方は、合唱団には入りません。

ただ、合唱をしているから実力がないというわけではないようです。
実は、知り合いの声楽家が、プロ合唱団のオーディションを受けて落選してしまったのです。ソリストのコンクールで入賞歴もあり、上手な人でしたので、合格すると思っていたのですが、どうも華やかすぎる声質が合わなかったようです。合唱では、どちらかというと、周囲と溶合わせてハーモニーを作りやすい声のほうが好まれます。だから、プロのソリストの訓練を受けた声楽家でも、ソロと合唱の声はギアチェンジして歌っているのです。
また、ソリスト向きの人は、性格的に「私の声を聴いて」という傾向が強く、集団の中にしてもどうしても声が突出してしまうことが多いのだそうです。

よく、合唱にきていて、「私、下手だから・・・」と自信の無い方がいらっしゃいますが、いつも「そんなことはないよ」と声をかけます。
合唱ができるということは、人の声を聴いて上手く自分の声をハーモニーさせることができる。それだけで力があるということだからです。そして、合唱団の皆さんは、ソリスト一人では出来ないような音楽をすることができるのです。


ハーヴェイ・セイフスター、ピーター・エコノミー著「オルフェウスプロセス」では、アメリカのニューヨークを本拠地とするオルフェウス室内管弦楽団という指揮者のいないオーケストラのマルチ・リーダーシップ・マネジメントの本です。

この本で、ノーマン・R・オーガスティン、ロッキード・マーティン元会長兼CEOの言葉が印象的に書かれています。

「スター歌手はオペラを活気づけるだろうし、おそらくは小規模な新興企業でも華々しく活躍するだろうが、大企業には居場所がない。」

これは、合唱でも、企業でも起こることは同じなのです。

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