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源義経にみるプロフェッショナルな戦略思考

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ホールでの演奏会。
「初めてのホールで一回目から良い演奏をすることは難しい」と言われています。
 
これはどんなに世界最高のホールであったとしてもです。
 
例えば、東京紀尾井町にある紀尾井ホール。
ウィーン楽友協会ホールをモデルとして設計されたような造りで、シューボックス型。上質な残響の長さ、木の床、客席のクオリティ、そして燦然と輝くゴージャスなシャンデリアまでそっくり。
しかし、こんな素晴らしいホールでも、一回目から長い残響や音質を生かすのは、プロといえども難しいのです。
 
そのため、本番から少し前に必ずホールでのリハーサルを行います。
ホールリハーサルが終わってからが本当の演奏会のための練習といえると思います。多少経費がかかりますが、ぶっつけ本番で失敗する方がずっと痛手が大きいのです。
 
ホールにはそれぞれクセがあり、それを生かしてこそ、その演奏家なりの最高の演奏をすることが出来ます。
普段からそのような場所で何度も練習できる恵まれた人は早々いないと思いますので、最低1回のホールリハーサルでクセをつかんでおくのです。
 
「フォルテを頑張らなくていい」とか「弱音が通らないので、ピアニッシモでもくっきり演奏する」とか「残響が長いのでペダルを減らしてタッチを明瞭にする」とか「高音がキンキンして突出するので、全体のバランスを見直す」とか「速いパッセージが残響で団子状になってしまうのでテンポ設定を少し遅くする」とか「低音を減らして旋律ラインをさらにくっきりさせる」など、そのホールによって演奏方法を変えているのです。
 
鎌倉時代に源義経という武将がいました。
有名な牛若丸ですね。
 
義経は優秀な戦術家であったと言われています。
彼の戦は連戦連勝。一ノ谷の戦いでは、腹心の部下と共に断崖絶壁を馬で駆け下りるという武勇伝まであります。
そのような伝説が生まれるほど、彼の戦い方というのは神がかっていたのでしょう。
 
しかし、その華やかな戦歴の裏には、用意周到な下調べと、合理的な戦術がありました。必ず勝てる戦をしていた、ということです。武士としてだけではなく、戦略家としてもプロフェッショナルだったのですね。
 
その戦略の一つが「戦となる土地を知る」ことだと思います。
 
「一ノ谷の戦い」では、夜間の奇襲というアイデアと共に、平家の上洛を防ぐためのルート工作を行っています。
 
「屋島の戦い」では、一ヶ月もかけて準備を行っています。
得意の奇襲を行いますがそれは見せかけ。干潮時に馬で屋島に渡れることを調べた義経は陸から一気に攻めいったのです。海からの攻撃を予想していた平家の裏をかき、見事勝利しました。
 
「壇ノ浦の戦い」では、これもまた一ヶ月かけて瀬戸内海の制海権を奪い、慣れない海での戦いを有利に運んでいます。義経、計算済みだったかは分かりませんが、最後は潮流の変化も味方しました。天の時を得たのでしょう。
 
しかし、「天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず」という孟子の言葉にもある通り、やはり人の気持ちが一番大切、ということは常に心においておかねばなりませんね。

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