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鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

テレワークの普及は企業風土から見直さないと進まない

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 昨日、もう1つの記者向けの説明会は、サイボウズの新オフィス紹介だった。

 「まだ500人くらいの小さい会社だけれど、このオフィスをハブにして世界に広げていきたい」と言うのは、サイボウズの青野社長。サイボウズは以前はIT業界によくあるような離職率の高い会社だった。それがさまざまな施策で柔軟な働き方ができる会社となり、いまや離職率は4%程度に激減。結果的に社員数も順調に増え、以前の水道橋オフィスはかなり手狭になる。

 そんなオフィス環境の改善として、バーチャルオフィスを考えたそうだ。いわゆるテレワークの活用も。ところが、これには若手社員から反対の声があったとか。同じオフィスで一緒に働くことで、先輩から学ぶことができる。それがバーチャルオフィスでは難しいと言うのだ。さらには、同じ時間や体験を共有し、喜びや感動を分かち合いたいとの声もあったようだ。

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 それらの要望も踏まえ、バーチャルとリアルのいいところをとる。そうして日本橋という東京の一等地に新たなオフィスを構えることにした。コンセプトは「Big Hub for Teamwork」。27階と28階の2フロアーのオフィスは、27階がおもに顧客やパートナーと出会う場として設定されている。28階が従業員のワークスペースだ。ほぼ半分をコミュニケーションの場にして社外を含めた新たなエコシステムを築く場にするのは、オフィスとしてはかなり贅沢な使い方だろう。

 実際、投資もかなり大きなものとなった。そのため、昨年は赤字にすると宣言してできなかったが、この移転費用があるので「今年こそは赤字になります」と青野氏。今回このような思い切った投資ができたのは、ビジネスモデルが完全にクラウドにシフトしたから。積み上げ型の売り上げとなるクラウド型のビジネスにシフトしたことで、中長期的な投資計画も立てやすくなったというわけだ。

 さて、今回の新オフィス紹介の中で、興味深かった話題が1つ。それが、テレワークのための便利な仕組みがいくら揃っていても、それだけでテレワークが促進できるわけではないと言うこと。

 「サイボウズの働き方全体を見て欲しい。ツールだけではテレワークは進みません」と青野氏。テレワークがどんどん活用されるような会社の働き方を実現する。そのための企業の風土的なものから変えないと、いくら便利なツールがあってもテレワークは普及しない。

 テレワークは方法論や働き方の選択肢というより、働き方そのもの変革と捉えたほうがいいのだろう。連日猛暑日が続く中、当たり前になっている満員電車の通勤。根本的な働き方の変革がなければ、このまま続いてしまうだろう。できることなら東京五輪のころまでに、働き方の大きな変革が訪れてくれればいいのだが。

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